サステナブル・ツーリズムへの関心が高まる中、観光・交通運輸に関する研究機関の運輸総合研究所、国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所、観光庁は8日、「観光を活用した持続可能な地域経営の普及・促進に関するシンポジウム」を東京都内で開催した。地域が抱える経済、社会・文化、環境などの持続可能性に関する課題に対して観光政策はどうあるべきか。基調講演やパネルディスカッションを通じて、持続可能な観光の推進、観光を活用した持続可能な地域づくりの在り方を探った。
「住んでよし」が原点 シンポ主催団体あいさつ
わが国は本格的な人口減少と超高齢化が同時に進行する状況にある。低迷する経済あるいは地域の自立、活性化が急務だ。同時に、SDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルにも対応していかなければならない。もちろんコロナ禍、コロナ後への対応も待ったなしだ。そのような中で、将来にわたって住み続けたくなるような地域であるためには、地域の課題を解決しつつ、持続可能性を持った地域経営を行っていくことが不可欠だ。住民の生活の質、住民の幸せを追求し続けることがますます求められている。そもそも観光の本質は、「訪れてよし」の前に「住んでよし」だ。そのためには、観光が裾野が広く、地域の資源、産業、人材を有効に活用できるなどの特徴をしっかりと認識し、観光の切り口からそれぞれの地域の課題解決を目指すという視点を持つことが極めて重要になってきている。コロナ禍を通じて観光の脆弱(せいじゃく)性が浮き彫りになった。地域における観光の取り組みを後退させないために、観光が果たす役割や重要性を地方公共団体の施策や地域社会、住民の中にしっかり定着させることが重要だ。
宿利会長