鬼怒川温泉の芸妓文化を復活させようと、栃木県日光市の鬼怒川・川治温泉観光協会が7月中旬、芸妓候補を一般公募する。候補者は、半年間の育成期間を経て一人前の芸妓を目指す。同協会は、芸妓の減少に歯止めをかけて、かつての温泉地のにぎわいと文化を復活させることを目指しており、市も協会の計画に協力する方針だ。
同協会によると、温泉旅館やホテルに芸妓を派遣する「鬼怒川温泉芸妓・芸妓屋組合」は1935年ごろに設立された。ピーク時の高度経済成長の時代には300人を超える芸妓が所属し、夜の温泉街をにぎわせていた。
しかし、団体旅行から小グループ、家族旅行主体という旅行形態の変化に伴う宴会需要の減少や長引く不況、技能を持たずに参入できるコンパニオンの登場などで芸妓は減り続け、現在は50〜60代の9人だけ。温泉地の伝統文化は「風前のともしび」となってしまった。
同協会は、現役の芸妓が活躍しているうちに後継者を育てる必要があると判断。100万円の予算を計上して後継者育成に乗り出すことにした。また、芸妓を養成する稽古場がすでになくなっていることから、市に対して公共施設の貸与を要請した。斎藤文夫市長も市議会6月定例会での答弁で、協力に前向きの姿勢を示した。
計画では20代と30代前半の女性を対象に公募し、半年後にお座敷に出られることを目標に稽古する。指導は現役の芸妓や旅館の女将らが担当する。受講料は協会が負担する。なお、日光市内の4観光協会が12月に合併することから、芸妓養成事業は今年度の単年事業となり、来年度以降は新観光協会で継続を検討することになる。
詳しい応募要項や待遇などについては、28日の「鬼怒川温泉芸妓活性化委員会」で決定後、公表されることになっている。