
握手する平子社長(中央右)とチュンポン社長
アジア・オセアニアで利便性向上
全日本空輸(ANA)とシンガポール航空(SIA)は1月31日、戦略的包括提携契約の締結式を東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で開いた。既存のコードシェアを拡大しながら、2021年ウインターダイヤからのジョイントベンチャー(JV)開始を目標にし、今後は航空法に基づいた独占禁止法適用除外(ATI)となる協定の認可申請の準備を進める。世界の航空需要をけん引するアジア・オセアニア地域で持続的な成長、利便性の向上を図る。
同日に開いた記者会見では、ANAの平子裕志社長とSIAのゴー・チュンポン社長が意気込みを語った。平子社長は連携の意義を説明。「2004年からコードシェアを開始し、現在は13路線にANA便名が付いている。19年は、訪日が過去最高の49万人、訪問が80万人と拡大している。アジア域内における利便性向上のほか、経済、文化、人の交流を促進する架け橋となる」と述べた。
SIAのチュンポン社長は、シンガポールで日本の人気が高まっていることを紹介。「1968年の就航以来、日本は人気の就航地の一つ。日本特有の文化や世界的な和食、温かいおもてなし体験へのニーズは高い。現在はシルクエアー、スクートを含め七つの空港に108便を運航している。提携はより多くの恩恵をもたらす」と意気込んだ。今後はシンガポールのハブ化を推進する。
今回の提携で、運賃設定やスケジュール調整による乗り継ぎ利便性の向上、先進的な技術の共有、共同マーケティングなどを推進する。提携のメリットを平子社長は「他社の飛行機を自社の飛行機のように使えることが最大のメリット。需要によりキャパシティを決められる」と話した。訪日については「順調に伸びており、政府の掲げる目標は達成したい」と強調。首都圏以外にも就航するSIAの路線とANAの国内線を接続し、利便性を高め、誘客を拡大する。
ANAにとっては、ユナイテッド航空(アジア―北中南米間)、ルフトハンザ航空(日本―欧州間)に続き3番目のJV。アジア・オセアニア地域では初となり、まずは日本、シンガポール、オーストラリア、インド、インドネシア、マレーシアの6カ国が対象となる。新たなコードシェアの路線は後日発表される予定。
中国路線は運休も
ANAの平子社長は、同会見内で新型肺炎に関する対応について言及。中国・武漢への定期便は3月1日まで運休すると表明しているが、その他の便についても「中国便の運休は考えざるを得ない」と考えを示した。
ANAは2月4日、成田―北京線の運休、羽田―北京線の減便を新たに発表。現在、中国10都市11拠点に就航している。中国線のシェアは、国際線の14%、全体の7%を占めている。
握手する平子社長(中央右)とチュンポン社長