JTB常務執行役員 エリアソリューション事業部長 森口浩紀氏に聞く


JTB常務執行役員 エリアソリューション事業部長 森口浩紀氏

観光地を面で活性化する

ふるさと納税事業さらに強化

 JTB常務執行役員エリアソリューション事業部長の森口浩紀氏に、人流、商流を支える仕組みやコンテンツを創出し、地域の事業者や自治体に対する各種ソリューションの提供や観光地開発を行うエリアソリューション事業の展開について聞いた。

 ――21年度はエリアソリューション事業がスタートして1年目。どう取り組んだ。

 「デジタルソリューションを一元的に提供する『観光地デジタル化支援事業』と、交流促進・運営支援サービスを複合的に提供する『観光地整備運営支援事業』、観光地経営やエリア・地域の発展に貢献し関連事業に取り組む『旅ナカコンテンツ提供事業』という三つの事業区分に整理し、推進してきた。観光地デジタル化支援事業では、山梨県や東武鉄道と共に観光型MaaSの実現に取り組んだ。また、『JTB BOKUN』をはじめとする流通プラットフォームサービスの契約事業者の拡大や、宿泊事業者向けソリューションの『KOTOZNA―in ROOM(コトツナ・イン・ルーム)』の拡充などデジタルサービスの仕組み作りや開発に取り組んだ。観光地整備・運営支援事業では、主にふるさと納税のサイト『ふるぽ』などの契約自治体数や納税額の増加に向けて取り組むとともにふるさと納税をして、その地域を旅行で訪れてもらう『JTBふるさと納税旅行クーポン』拡大にも注力した。旅ナカコンテンツ提供事業については、主事業である『デスティネーション・デベロップメント』の実証実験がコロナ禍により遅れた。今後は沖縄や他エリアでの展開を見据え、事業の推進体制の構築に取り組みたい」

 ――22年度だが、まず市場環境をどう見ている。

 「国内人流は大きく改善する。入場や観光体験は人の流れが活性化するとおのずと市場も活性化する。他方、国際間の人流は、不透明な状況が続き、回復は22年度後半以降と想定しその回復に備えた対応を図ることが重要だと捉えている。コロナ前の旅行者は、OTAやメタサーチで情報を検索し予約するのが主だったが、コロナ禍になり安心・安全と、旬の情報を正確に取り入れるという考えから、公式サイトから情報を取り予約する人が圧倒的に増えてきている。当社のツーリズム・プラットフォームサービスの導入や、地域の交流促進開発・支援などエリアソリューション戦略・サービスにとっては絶好の機会であり、需要は高まると考えている」

 ――22年度の事業方針は。

 「経済・環境両面での地域の持続的な発展」に向けて、3事業の一体的な展開により、観光地を面で活性化するビジネスを特定地域で開始する。観光地デジタル化支援事業は、観光情報プラットフォームなど、デジタルソリューションの開発、拡充を進める。われわれの強みである日本全国の支店と協定旅館ホテル連盟との連携の強化を図った上で、地域にしっかりとソリューションを提供できる営業を行っていくというのが一番のベースになる。そのためにはツーリズム・プラットフォームの参画事業者を増やしていきたい」

 「観光地整備・運営支援事業は、ふるさと納税の事業をさらに強化する。地域に寄り添うサテライトオフィスを増設し、ふるぽだけではなく、さまざまなサイトで納税をしてもらえるようにマルチサイト戦略をさらに拡充していく。また、JTBグループ各社や協業パートナーの日本管財と連携し、不動産事業や施設運営・管理事業などハード整備事業の強化を図っていき地域の課題解決に取り組んでいきたい」

 「旅ナカコンテンツ提供事業では、重点戦略地域としている沖縄でのコンテンツの開発、拡充をしていきたい。恩納村や那覇を中心に他地域に周遊してもらえる新しい魅力づくりを沖縄で進めていくことが、22年度事業の核になる」

 「『万博・IR事業』も推進する。25年に控えている『大阪・関西万博』や未来のIRは多くのお客さまが集う絶好の機会であるため、これらに向けた入場管理システムなどの事業を推進する」

 ――旅ホ連会員との協業の取り組みは。

 「観光地のデジタル化支援、ハード整備といった地域活性化への取り組みで連携していきたい。観光事業者を紹介していただく、あるいは、地域コンテンツの開発をするにあたってわれわれと一緒に自治体、行政に対して要請、要望や営業をしていく、協力体制をぜひ構築していきたい。また、昔は宿にお客さまを送る『送客』というのがメインだったが、これからは、地域自体の魅力度を高めて、行政の予算や国の施策なども活用しながら、地域全体に人を『誘客』する仕組みづくりを旅ホ連と共に行っていきたい。そうした取り組みが地域の力になっていく」

 「ふるさと納税についても、ふるさと納税旅行クーポンを行政、自治体に導入してもらうことがその地域の宿泊者数の増加につながるので、導入への働きかけを一緒になって行っていく。宿泊施設では素晴らしい商品をいろいろ持っているので、そういった商品を返礼品にする開発も引き続き行っていきたい」

 「訪日客が戻ってくるときに備えて、各旅館・ホテルへの宿泊事業者向け多言語ソリューションであるKOTOZNA―in ROOMのトライアル導入を推進している。これは多言語でいろいろなお客さまの接客ができる、かつ宿泊事業者の方も業務効率化が図れるというツールだ。現在、2万8千の旅館・ホテルと導入の契約を結んでいる」

 ――旅ホ連への要望は。

 「自治体の紹介やKOTOZNA―in ROOMの導入などの動きをさらに加速させていっていただきたい。旅ホ連の加盟施設はわれわれのために本当に一生懸命にやっていただいている。われわれはそれに甘えることなく、協業施策を作り上げていく」

 

JTB常務執行役員 エリアソリューション事業本部長 森口浩紀氏

 
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