観光経済新聞では毎年、宿泊予約サイトに対してアンケート形式で実態調査を行い、新年号の紙面で結果を発表している。第1回の調査発表は、2007年の新年号。当時はまだOTA(オンライン・トラベル・エージェント)などという言葉は存在せず、「宿泊予約サイト」「ネットエージェント」などと呼んでいた。
私はインターネット旅行販売に大きな可能性を感じ、従来型の旅行会社を密かに「レガシーエージェント」と名付けたが、さすがに記事で使う勇気はなかった。
ここ数年は、OTAの略称がグローバルな一般名詞となり、それに合わせてTTA(トラディショナル・トラベルエージェント)という呼称もウェブ関係の国際カンファレンスなどでは耳にするようになった。トラディショナルならレガシーより上品な気もするので、TTAは今度記事で使ってみようと思っている。
ところで、2018年新年号の第12回調査からは、OTAに加えてメタサーチ(比較サイト)と民泊サイトも調査対象に加えた。全くウェブの世界はスピードが速い。国内OTAの急伸が国内TTAを脅かしたのも束の間、今度は外資OTAが上陸し、国内OTAを蹴散らしている。そして現在の旬は、メタサーチと民泊サイトだ。
今度は、メタサーチと民泊サイトに外資OTAが戦々恐々とする番なのかと思いきや、実はそうはならない。
ブッキング・ドットコムを中核とするプライスライングループの傘下にはメタサーチのカヤックがあり、ブッキング・ドットコムは世界の契約宿泊施設の半数以上が既に民泊施設だ。また、エクスペディアはグループ内に、メタサーチのトリバゴ、民泊サイトのホームアウェイを擁している。
グローバルOTAは、オンライン旅行予約の全てをグループ内で網羅する「OTP(オンライン・トラベル・プラットフォーム)」という新しいステージに進化している。
国内OTAが今後単独でクローバル展開する可能性はほぼゼロだと思うが、外資OTAとのアライアンスを強化する方向に大きく舵を切ったとしても、将来的にグローバルOTP内の1ローカルメニューに成り下がるようなことだけはないようにと祈っている。
(観光経済新聞社 企画推進部長 江口英一)