日本観光研究学会は18日、東京の立教大学でシンポジウムを開いた。「オーバーツーリズム」をテーマに、国内と海外の事例を専門家が解説。解決策を探った=写真。
国内の観光地の事例を京都市役所の福原和弥氏、国内の住宅地の事例を日本女子大学の薬袋(みない)奈美子氏、海外の事例を日本総合研究所の高坂晶子氏がそれぞれ述べた。
福原氏は「市バスと一部観光地の混雑」「観光客のマナー」「違法民泊」という京都市観光が抱える三つの問題を指摘。混雑対策では、バスの1日乗車券値上げと地下鉄・バスの共通1日乗車券の値下げで観光客を地下鉄に誘導するほか、観光系路線バスと生活系路線バスの停留所を一部で分離するなどの対策を述べた。
薬袋氏は東京都豊島区の住宅地、雑司が谷の事例を紹介。同地では3日間で30万人を動員する「鬼子母神御会式大祭」が毎年開かれるほか、地域団体が制定した歴史と文化の街づくりプロジェクト「雑司が谷がやがやプロジェクト」が日本ユネスコ協会連盟の「未来遺産」に認定された。
ただ、大半が狭あい道路で構成され、家と道路が近い街だけに観光地化に反対する住民がおり、地域で来訪者向け動線と生活動線の分離を検討している。
高坂氏は、バルセロナ(スペイン)、アムステルダム(オランダ)、ボラカイ島(フィリピン)、ガラパゴス諸島(エクアドル)など海外のオーバーツーリズム対策を解説。人口161万人のバルセロナには年間3200万人の観光客が“殺到”。市民が観光客排除のデモを行うなど社会問題になったことから市長の主導で「超過観光税」を導入したほか、旧市街地でのホテルの新設禁止を決めた。
高坂氏はわが国で求められるオーバーツーリズム対策として、政府は取り組み方針の明確化、地域は起こり得る問題と取るべき対応をあらかじめ想定しておくことが必要と説いた。