日本観光研究学会は5月31日、立教大学新座キャンパス(埼玉県新座市)でシンポジウム「スポーツと観光」を開いた。パネルディスカッションでは、プロサッカーJリーグ「鹿島アントラーズ」(茨城県鹿嶋市)とさいたま市の公益社団法人さいたま観光国際協会の担当者らが登壇。スポーツにより地域振興を進める鹿嶋、さいたま両市の取り組みを語った。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、「スポーツツーリズムが集客に大きな可能性を秘めている」実態が各氏の発言から明らかになった。
アントラーズを運営する株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーの小西広樹・営業第一グループ長は、地域の振興にサッカークラブがどうかかわっているかを解説。経済効果として、観戦者1人当たり6467円、1試合で平均1億618万円の消費が地域内で行われている同社の調査結果を報告した。
また、ホームゲームにおける県外来場者数が1試合平均7435人おり、県外客をコンスタントに誘致している現状も説明した。
小西氏は「アントラーズは50キロ圏43市町村でお客さまの50%を占めており、商圏が広い。サッカーは距離への抵抗感が低い、地域にとって有益な観光資源となっている。距離を障害としないコンテンツとして、将来に向けて大きな可能性を秘めている」と話した。
さいたま観光国際協会の矢作光広・スポーツコミッション事業担当副参与は、「大規模スポーツイベントの誘致」「施設確保、財政支援などスポーツイベント主催者へのサポート」という協会の二つの役割を紹介。競技場など豊富なスポーツ資源を活用して地域活性化を図っている同市の現状を説明した。
矢作氏は、スポーツイベント誘致の三つの戦略として「特定競技やカテゴリーのメッカづくり」「ターゲットを明確にした誘致」「自然・都市環境を生かしたエコロジカルスポーツの振興」を挙げ、それぞれについて解説。競技ではサッカー、ターゲットでは子供とシニアの誘致を図っている現状を説明した。
大会誘致の課題について矢作氏は「優位性の確保」を挙げ、「スポーツツーリズムは観光庁が推進しているため、他都市でもスポーツコミッションの設立が相次ぎ、都市間競争が激しくなっている。さいたま市での開催のメリットを明確に示して、誘致を行う必要がある」とした。
パネルディスカッションにはこのほか、専修大学経営学部教授で、ソウル五輪レスリングの金メダリスト佐藤満氏、一橋大学大学院商学研究科准教授の岡本純也氏が登壇。佐藤氏は「海外にはスポーツも観光も楽しめるアクティビティが充実している。日本の各地で、お年寄りから子供まで、それぞれの年齢層に合わせたアクティビティを提供できればいい」、岡本氏は「既存のスポーツツーリズムは市町村単位で振興策に取り組んでいるが、マラソンや自転車競技など、広い範囲で行われるスポーツ大会が増えている。これを成功させるには、複数の市町村がもっと連携する必要がある」と説いた。
スポーツツーリズムをテーマに発言する4氏