昨年12月23日に閣議決定されたデジタル田園都市国家構想総合戦略は、観光を「国内外の需要を地域に取り込む、地方経済を支える重要な産業」と指摘。
観光分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めることにより(1)「旅行者の利便性向上および周遊促進」(2)「観光産業の生産性向上」(3)「観光地経営の高度化」を図ることが可能となり、地域全体の収益拡大にもつながるとしている。
(1)「旅行者の利便性向上および周遊促進」は、宿泊、交通、体験プログラムなどに関するシームレスな予約・決済や、「その時、その場所、その人」に適した情報のレコメンドに関するシステムの構築。
(2)「観光産業の生産性向上」は、宿泊事業者における顧客予約管理システム(PMS=プロパティ・マネジメント・システム)の導入による業務の効率化やサービスの高付加価値化。
(3)「観光地経営の高度化」は、観光地経営の中核を担う観光地域づくり法人(DMO=デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション)における、旅行者の移動、宿泊、購買などのデータを用いたマーケティング戦略や観光地経営戦略の策定。
さらには地域内の宿泊施設の予約情報や販売価格に関するデータを共有することによる宿泊事業者へのレベニュー・マネジメント(需要に応じて価格を変動させる手法)の促進。
デジタル田園都市国家構想総合戦略の重要業績評価指標(KPI)の一つとして、これらDX戦略を有するDMOを2027年度までに90団体にする目標が設定されている。
DX推進の先進地域として、城崎温泉(兵庫県豊岡市)が挙げられる。温泉地の各旅館に入った宿泊予約の日程、人数、金額、予約者の居住地域などのデータを行政、旅館組合、DMOからなる豊岡観光DX推進協議会(事務局=DMOの豊岡観光イノベーション)によるシステムが収集。温泉地全体の予約状況を可視化するとともに、数カ月先までの宿泊需要を予測できるようにしている。各旅館はこれらのデータを参考に、収益の最大化を図る取り組みを行うことが可能となっている。
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観光庁の和田浩一長官は1月18日の専門紙記者会見で、観光DXの推進、デジタル田園都市国家構想の実現に関連して、DMOが事業計画にDXに関する戦略を盛り込むことを後押しするための指針を策定する考えを明らかにしている。和田長官の発言は次の通り。
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