「メイド・フォー・京都」追求 ザ・リッツ・カールトン京都 総支配人 カルロス・タレロ氏に聞く


ザ・リッツ・カールトン京都 総支配人 カルロス・ダレロ氏

持続性と責任ある観光提供

 ――7日に開業10周年を迎える。この10年間を振り返ってどうだったか。

 「今でこそ京都市内には外資系ラグジュアリーホテルが多くあるが、10年前は当館が京都市内では初めてのインターナショナル・ラグジュアリーホテルだった。パイオニアとして世界水準の最高のホスピタリティを提供、紹介するのはもちろん、地元の皆さんからも支持されるホテルになる必要があり、責任重大であった」

 「当ホテルが掲げる『Made For KYOTO』は、世界の方々に向けてはもちろんだが、京都の皆さんに向けたメッセージでもある。この10年間、地元の皆さんのためにも建てられたホテルであるという意味の具現化に向けても取り組んできた。地域コミュニティに入りこみ、地元の皆さんに支えていただけるようになってこそ『京都のホテル』とうたえる。最近は、館内のレストランやラウンジに地元の方がたくさん来て食事やお茶を楽しまれている。その光景を見られるのが本当にうれしい」

 ――地域との連携、コミュニティへの参加、貢献のためにどのような取り組みを進めてきたのか。

 「地域コミュニティとの良い関係は一朝一夕に確立されるものではない。互いに協力し続ける中で深まっていくものと考えている」

 「当ホテルは、旧フジタホテルの石組みを使った滝や専属庭師による枯山水の庭園を備え、内装などにも伝統工芸や意匠を取り入れている。館内には、日本、京都を感じさせる400点以上の美術品を配置し、京都の素晴らしい歴史と文化、そして職人の技を紹介する場としての取り組みを積極的に続けてきた。また雇用や地元産野菜の積極的な利用など、京都の歴史や文化、リソースをビジネスに生かすよう、常に心掛けている」

 「京都産品をはじめとする日本の品物は、クオリティが素晴らしく、品質への妥協を許さない日本人の姿勢が表れている。京都にあるホテルとして、京都由来の作品や製品、農産品を積極的に使うことで、地元の伝統文化や技術の維持、経済への貢献につながると考えている。また輸送コストを抑えることによる環境保全にもつながる」

 「このほか災害時には避難場所として被災者を受け入れることにも合意している。またザ・リッツ・カールトンの社会的および環境的な責任を果たすための活動『コミュニティフットプリント活動』でも地域貢献を図っている」

 ――コミュニティフットプリントとは。

 「『子供たちのウェルビーイング』『飢餓と貧困救済』『環境に対する責任』に変化をもたらす活動に取り組み、地域コミュニティに継続的に貢献するものだ。毎年12月には、児童養護施設の子どもたちへのプレゼントを持参したゲストに朝食を提供する『チャリティブレックファースト』を開催している。おかげさまで、例年300~500人の方に参加いただいている。クリスマスに行っている地元の中学・高校生によるハンドベルやクリスマスキャロルの演奏会もこの一環だ。これらの活動が評価され、17年には京都市から『京都らしい宿泊施設表彰―地域と調和し、貢献する宿泊施設』で表彰を受けた」

 ――現在の客層は。

 「現在、日本人客が3~4割。外国人客で最も多いのはアメリカ人だ。外国人客のリピーター率は日本人ほど高くないが、2、3年に1回は必ず来るという方もいる」

 ――和傘づくりなど体験型アクティビティも豊富だ。参加状況はどうか。

 「アクティビティプログラムの担当者が7、8人いるが、スタッフが足りないためにリクエストに応じられないこともあるほどだ」

 「外国人客は日本旅館にも関心が強く、日本滞在中、ホテルだけではなく旅館に宿泊する人もいる。私も旅館のサービスに発想力を刺激されることは多い」

 ――次の10年の展望は。

 「京都に来た外国人客は、よく『feel well』『心地よくなれた』と表現する。自然も近く、深い歴史と文化が暮らしに息づく京都だからこその感覚なのではないか。そういった京都ならではの特別な時間、体験の魅力を発信するホテルであり続けたい」

 「もっと持続可能な方法での旅行者の受け入れに取り組みたい。地元の人や暮らしに敬意を払い、マナーを守って旅行を楽しめる意識の高い旅行者を京都の街に送りだしていくことも、インターナショナルホテルの責務であると考えている」

 

 カルロス・タレロ氏 2012年マリオット・インターナショナル入社。19年「セントレジスホテル大阪」総支配人を経て、22年から現職。スペイン・ビルバオ出身。 【聞き手・小林茉莉】

 
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