鉄道、バス、タクシー、福祉輸送などの全国の交通事業者や研究者らで構成する「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会」(岡村敏之実行委員長=東洋大学国際学部教授)は5月29日、「続・くらしの足をなくさない!緊急フォーラム・新型コロナによる交通崩壊をみんなで乗り越えよう!」をYouTube配信で3時間にわたりオンライン開催した。事前申し込み制で820人が視聴した。
赤羽一嘉国交相は冒頭にビデオメッセージを寄せ、「未曾有(みぞう)の危機に対し、事業者の資金繰りや雇用維持などの支援に全力で取り組んでいる。2次補正で感染拡大防止策に約140億円の予算を用意した。皆さまに寄り添い支援を続ける」と語りかけた。その上で「今後は新しい生活様式が求められる。国土交通省として『アフターコロナの公共交通サービスのあり方』に向けて施策の方向性を打ち出したい」と述べた。
藤井直樹国土交通審議官は「今年は地域公共交通活性化再生法改正など交通にとって節目の年でもある。多様な支援メニューも用意している。時差通勤定着など『コロナ後』の交通のあり方を議論し、臨機応変に対応したい」と話した。
岡本敏之教授は「交通崩壊が社会崩壊を招く。交通崩壊は現在も進行中だが、事態収束まで移動を確保し続ける必要がある」と語り、現状に警鐘を鳴らした。
原田修吾国交省総合政策局地域交通課長は国の支援策について説明。「『感染防止徹底』『事業者の当面のキャッシュ(無担保融資など)』『財務力が脆弱(ぜいじゃく)な事業者の支援』『需要回復』『将来モデルへの円滑な移行』を柱に支援する。車内混雑回避のための実証運行への補助や、地方創生臨時交付金の活用がポイント。事業横断的な多様な支援メニューも用意している」とした。
同フォーラムでは、乗客数激減により経営に大きなダメージを受けた鉄道、バス、旅客船事業者らの現状も紹介した。
名古屋大学大学院環境学研究科の加藤博和教授はある大手私鉄について「4月の旅客収入は半減。バス事業を含むグループ連結は3月までで130億円の減収で、4月以降さらに拡大の見込み」と報告した。
ひたちなか海浜鉄道の吉田千秋社長は「乗客数は激減しており、今年度7割減もあり得る。『密』防止のため減便も困難で、減収分の補填(ほてん)がないと経営と安全(感染防止)の両方に懸念がある」と窮状を訴えた。
高速バスマーケティング研究所の成定竜一代表は「高速バス事業者はほとんどの便が減便に追い込まれた。地方の事業者の経営にインパクトが大きく、地域交通にも影響しかねない。高速バス運賃を『GoToキャンペーン』の対象にするなどの支援が必要」と述べ支援の必要性を強調した。
赤羽国交相