海外に比べて日本は夜の時間帯に外国人旅行者が楽しめる娯楽が少ないといわれているが、こうした状況を改善しようと、一般社団法人ナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA、斎藤貴弘代表理事=ニューポート法律事務所パートナー弁護士)は11月26日、東京・白金台の八芳園で、夜の経済(ナイトタイムエコノミー)の活性化策を探るシンポジウムを開催した。観光庁が共催し、自治体や事業者など約200人が参加した。
冒頭あいさつした時間市場創出推進議員連盟の秋元司事務局長(衆院議員)は、「訪日客4千万人、6千万人を目指すにはさまざまなおもてなし(の場面)を作る必要がある。その一つが夜間に楽しめる場の提供だ。しかし、日本は夜の時間帯が弱い。知恵を絞って夜の経済をしっかり作ってほしい」と呼び掛けた。
観光庁の田端浩長官はナイトタイムコンテンツの海外事例や推進に向けた取り組みを説明。
一例として、東京都品川区での屋形船を使った水辺を巡るクルーズや、港区の英国の「パープルフラッグ制度」を参考にした「MINATOフラッグ制度」を紹介。屋形船クルーズでは船内表示を多言語化し、英語版の観光案内ビデオの放映や英語対応可能なスタッフも同乗するという。
観光庁は19年度、「浅草ナイトタイムツアー『EDO IKI NIGHT(江戸粋ナイト)』創生事業」などナイト関連13件の事業を採択し、ナイトタイム活用のポテンシャルを調査している。
シンポジウムではこのほか、日本の縁日文化の普及を目指し、神田明神(東京都千代田区)の境内を舞台に開催する「江戸東京夜市」、忍者のショーを船で楽しめる大阪・道頓堀のクルーズなど、先進的な事例が紹介された。
また、オランダ・アムステルダムで「ナイトメイヤー」を務めたミリク・ミラン氏がナイトタイムエコノミーのトレンドについて述べた。
ナイトメイヤーは夜の市長と呼ばれ、夜の世界の窓口として情報や要望を集約し、昼の行政や政治へ働き掛ける役目を担う。欧州各国の都市に存在する。
ミラン氏は「(ナイトタイムエコノミーの定着には)行政と民間事業者、そして住民が連携して取り組む必要がある。また、深夜まで公共交通機関が動いていることも重要だ」と指摘した。
欧米などの海外の都市に比べて、日本は夜の時間帯を楽しめる娯楽が少ないといわれる。ナイトタイムを充実させれば、飲食や宿泊を伴った消費につながり、経済効果が期待できるとされる。半面、深夜営業が増えれば治安の悪化につながりかねず、人手の確保も難しいと懸念の声もある。
先進的事例を発表する関係者