日本能率協会は、東京ビッグサイトで7日から4日間開いた国際ホテルレストランショー(HCJ2023)で、主催者企画として「宿泊業のスマート化研究会」ブースを出展。東急リゾーツ&ステイ、旅館紅鮎、ホテルおかだなどの宿泊施設、りそなカード、ソニーマーケティングなどの企業、東洋大学などの大学・研究機関が参加した。
ブースでは、デジタル化、スマート化により宿泊客の顧客体験価値を向上させるソリューションを紹介。また、同研究会で3年間にわたって研究、議論してきた内容を踏まえた主催者セミナー「宿泊業のスマート化研究会が構想する、未来の宿泊業のあり方」を7日に2枠実施した。
いずれのセミナーも東洋大学国際観光学部の徳江順一郎准教授がコーディネーターを務めた。
新型コロナの蔓延で日本の観光・ホスピタリティ産業は未曽有の事態に陥ったが、それ以前より、生産性、人手不足、労働環境といった様々な問題が指摘されていた。他産業と比べて〝スマート化〟が進んでいないことも原因の一つに考えられることから、スマート化による付加価値と体験価値の向上による売り上げ増や、省力化によるコスト削減が図れるのではないかと仮定し、同研究会では、宿泊施設側、企業側の各社で膝を突き合わせて意見交換を進めてきた。
ホスピタリティDXセミナー「宿泊施設(ナカ)の未来を考える」には、日本ホテル執行役員でメズム東京オートグラフコレクション総支配人の生沼久氏と、無料スマートチェックインシステムを提供するアイパス社COOの山田真由美氏が登壇。生沼氏は、メズム東京で人材不足を補う作業効率化の試みとして、自動搬送装置を用いたリネン搬送ロボットを導入した事例などを紹介した。山田氏は、宿泊者のスマホを活用して、チェックイン、旅ナカの施設案内と観光案内、チェックアウトまでの機能を宿泊施設に無料で提供するアイパスのEX(エクスペリエンスシステム)などを説明した。
地域連携推進分科会セミナー「地域と宿泊施設との関係性(ソト)の未来を考える」には、HATAGO井仙・ryugon(龍言)社長の井口智裕氏と、宿泊施設向けリモート電子錠「スマートロック」を提供する構造計画研究所のすまいIoT部の川村晃一郎氏が登壇した。
井口氏は、「日本の観光は、目に見えるコンテンツを高く売ろうとか、宣伝しようとか、ユーチューブで発信しようとかいう発想に陥りがちだが、お金に変えるためにはコンテンツの質が重要。そして、そこに紐づいた地域ストーリーがコンテンツに付加価値をつける」と指摘。川村氏は「スマートロックは、PMS(ホテルシステム)が入っていないと設置できないのだが、地方旅館では宿帳が紙台帳のところも多い。まずはエクセルで管理して、次にPMS導入というステップが必要。PMSを入れないと、そもそも数値分析も顧客管理も難しい」と話した。
HCJ2023「宿泊業のスマート化研究会」セミナー