エクスペディアは10月19日、シンガポールで開催されたアジア最大級のB2B旅行見本市「ITBアジア」で基調講演を行った。「Travel in Action’Digitaly」と題して、エクスペディア・グループAPAC市場担当副社長(Vice President Market Management Asia-Pacificのマイケル・ダイクス氏が登壇した。
ダイクス氏は講演で次のように話した。
新型コロナ禍は前代未聞の出来事だった。国境が閉ざされたり、再開したりとルールは常に変化した。旅行業界は、このような状況の変化に適応し、なおかつニーズを取り込むために、より迅速かつ機微に対応する方法を学ばなければならなかった。そして、パンデミック発生後の予測不能な事態に対して、より柔軟に適応できるようになった。このような変動は一時的なものではない。新型コロナウイルスによるパンデミックは、短期的なものだけでなく、今後長期にわたって旅行業界のあり方を変え続けていくだろう。
パンデミックをきっかけに、もう二度と2019年当時には戻れない大きな二つの変化が起きた。一つ目は旅行者の期待値。二つ目は旅行業界におけるテクノロジーの民主化(テクノロジーの進化による旅行業界への異業種参入)だ。
さまざまな旅行者の行動の変化、例えばサステナビリティに配慮するようになったことや、キャンセル無料を見込むようになったこと、一生に一度の旅を求めるようになったことなど、いくつかの事例に触れてお話しすることもできるが、旅行者が求めていることの中で最も重要なことは「徹底的な顧客サービス」と「フィジカルとデジタルの融合」だろう。
消費者はアマゾンで買い物することに慣れてしまった。ウーバーでタクシーに乗る。ネットフリックスで好きな番組を見る。そしてこの完璧な体験を生活のあらゆる要素に求めている。ショッピング、銀行、仕事、友人との会話…。彼らはボタンに触れるだけで、どんなタスクもこなしたいと思っている。旅行に行きたいと思った瞬間から自宅に戻るまで、常にオンラインでつながっていて、パーソナライズされた便利な旅をしたいのだ。では、この完璧なデジタル体験のための要素は何だろうか。それは「分かりやすさ」「信頼できる情報を提供していること」「パーソナライズされていること」だろう。そして、できるだけ手間のかからない解決方法を望んでいる。
次にフィジカルとデジタルについてお話ししたい。旅行者の全体的な体験は、デジタル要素よりもはるかに重要だ。旅行会社は、ホテルのスタッフの行動やサービスによって、記憶に残るポジティブな体験を促進することができる。アクセシビリティを考慮したウェルネスの提案、地元の素晴らしいランニングコースの紹介、地元の人しか知らないような近場の素晴らしい食事スポットなどだ。
しかし、こうしたデジタル的な要素と実体験は双方がうまく調和していなければならない。またデジタル面を効果的に活用すれば、ホテル経営者やホストや旅客運輸会社が心のこもったサービスを提供する上で大きな助けになるだろう。
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