「旅,smart」強化しテーマ旅行深堀り クラブツーリズム 取締役旅行営業本部長 柏山 卓士氏聞く


クラブツーリズム 取締役旅行営業本部長 柏山 卓士氏

 ――2023年度の業績見通しは。

 「旅行営業本部としての売上高としては、計画値に対して上期が92%、下期が97%。通期で94%の見通しだ。上期が少し厳しかったが、昨年5月の新型コロナウイルスの『5類』移行後から旅行需要が回復し、国内旅行については政府の旅行支援策もあり、業績が上向いてきた」

 「営業利益ベースでは計画値通りの進捗(しんちょく)であった。売上高では若干届かなかったものの、売上総利益率のアップ、費用減などにより、達成となった」

 ――印象的なことは。

 「やはり5類移行後の旅行需要の回復だ。特に夏祭りやイベントはコロナ以降中止となっていたものが相次ぎ再開の動きをみせた。例えば、当社ならではのイベント、おわら風の盆を別途貸切で実施する『月見のおわら』を約3年ぶりに開催したところ、販売期間が短かったにも関わらず、2700人ほどの参加があり、やはりイベントは強いなというのを実感した。また、テーマ型旅行はコロナ禍でもコロナ前を上回るぐらいの数字を上げている。際立った特徴は1人旅が伸長したということだ」

 ――コロナ禍を経て、旅行者の意識が変化した表れか。

 「コロナ禍では同行者を誘いにくいため、やむなくおひとりで旅行に出かけ、コロナ禍で我慢されていた欲求を実現させるために躊躇(ちゅうちょ)なく、自分が行きたい時に行きたい旅行に行くマインドが強くなってきていると感じる。一方で5類移行後は友人同士やご夫婦での参加も当然増えてきている。ツアーでいろんな人と出会い、コミュニケーションを図り、感動を共有したいという旅を通しての出会いを求めていると感じる。『交流』が一つのキーワードになるような気がする。歴史を学ぶ旅など目的が明確なツアーは好調に推移した。あとは登山やハイキングも好調だった」

 ――テーマ型旅行は講師やガイド(添乗員)の質に左右される?

 「講師やガイドと学びの要素のあるツアーはまだまだ伸びると思う。東名阪中心にやっているが、着地型商品の強化により、全国的に広げていく必要がある。ホスピタリティのある添乗員、講師などを確保し、次につながるリピーターを育てていくビジネススタイルは弊社の強みでもある」

 ――24年度の事業展開は。

 「パックツアーの『楽で安心』と個人旅行の『自由できまま』の両方の特長を備えた新しい旅のかたち『旅.smart』というブランドを立ち上げ、昨年あたりから動き出しているが、これを強化していく。もう一つはテーマ型旅行をさらに深掘りし、常に新しいものを提供していく」

 「高齢のお客さまはだんだんと旅行に行く機会が減る。それをカバーするには次世代、40~50代のお客さまの囲い込みが欠かせない。次世代の方々が求める旅は何かを真剣に考えていく必要があるだろう」

 ――リピーター対策については。

 「いかに品質を上げていくかだ。行程、食事、添乗員、電話での対応など全てのレベルを上げる。商品ラインアップの充実。毎年同じようなツアー内容では飽きられてしまう。いかに新しいものを提供していくのかが重要になってくる」

 ――インバウンドは。

 「今は台湾を中心にアジア圏の取り扱いが多い。インバウンド専門のツアーで貸し切りで催行したり、また、日本のお客さまと一緒に参加しているのもある。団体は貸し切りだが、個人や小グループは日本人との混在だ。日本人は親切で面倒見もいい。一緒に行けて良かったという声もあるので、インバウンドの一つの在り方ではないかと思う。ホームページの多言語化にも取り組み、夏ごろには開設できると思う」

 ――グループ全体の中でクラブツーリズムが果たすべき役割をどう認識しているか。

 「OTAの台頭が著しいが、OTAにはできない、旅の付加価値が重要であり、旅の創造というものがある。それができるのが当社であり、強みである。また、地域貢献については、地域へ送客することで、活性化に結びつけられる。新しいコンテンツであったりイベントであったり、地域貢献の実現というのを果たしていかなければならない」

 ――KCP会というのはクラブツーリズムにとってどんな存在か。

 「各支部会や連合会の会議に加え、なかなかコロナ禍で開催できずにいた商談会や社員の現地研修などを通して、関係は非常に深まってきていると思う。人と人とのつながりや関係性ができたらより情報交換しやすくなり、こちらもそれに応え送客しようとなる。堀会長の『共生と共創の精神』に応えるべく、当社にとってはすごく大事なパートナーだ」

 ――KCP会は旅館・ホテル、運輸機関、観光施設などさまざまな業種の集合体だ。やりにくいことはないか。

 「もともとクラブツーリズムは今と同じ形態で活動していたので、やりにくくなったという感じは一切ない。何かイベントをやる時は業種に関係なく皆が手伝ってくれる。それは今でも続いている」

 ――それぞれの業種が持っている情報や力を合わせれば新しいこともできる。

 「商談会などを通して、そうしたことが実を結びつつある。例えば、関西連合会の商談会では関西地区のパートナーの皆さまの多くが出席しており、KNTの担当者や当社の担当者が20分おきぐらいにブースを変わりながら名刺交換し、商談している。夜は懇親を深める場が設けられる。そうした試みは各地で始まっており、新しい商品造成につながってくる」

 ――KCP会に対する期待は大きい。

 「国内旅行の中では大きなウエートを占めている。1月に能登半島地震が起きた時、1500人ほどのお客さまが滞在していた。急きょ、対策本部を立ち上げ、私が現地に行くことになったが、大型バスでは移動できない中、KCP会の会員さまが中型バスを率先して出していただき、助かったことがある。KCP会さんとのつながりが大いに役立った。困ったときに助けていただける。当社も送客して助けていかなければという関係性を作ることは大事だと思う。今後さらなる関係強化を図り、ともに地域の価値を生み出すパートナーであり続けたい」

人気の月見のおわら

クラブツーリズム 取締役旅行営業本部長 柏山 卓士氏

【聞き手・観光経済新聞論説委員 内井高広】

 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒