理解不足で躊躇も
観光経済新聞社はこのほど、全国の主な旅館約150軒に外国人材の雇用に関するアンケート調査を行った。4月に運用が始まった外国人の新たな在留資格「特定技能」について、活用を考えている旅館が73.9%と、およそ4軒に3軒を占めた。長期にわたる雇用や、幅広い業務に従事できる点を期待している。半面、制度の内容を理解できず、活用を躊躇(ちゅうちょ)しているとの声も聞かれた。
自館で外国人材を雇用しているか聞いたところ、「している」が80.4%、「していない」が19.6%だった。回答旅館は大型の施設が多いが、外国人材が多くの旅館で欠かせない戦力であることが分かる。
雇用していると回答した旅館に、どのような形態で採用しているかを複数回答で聞くと、最も多いのがインターンシップで67.9%、次に多いのが高度専門職で60.7%だった。以下は技能実習生32.1%、その他(日本人の配偶者など)28.6%、アルバイト17.9%。
外国人材はフロント、接客(客室、レストラン)、調理、清掃、通訳と、既にさまざまなシーンで働いている。外国人材を受け入れた理由は「人手不足カバーのため」「募集してもなかなか日本人が来ない」など人手不足対策と、「インバウンドのお客さまが増えた」「通訳が必要」などインバウンド対策の二つを挙げる旅館が多かった。
技能測定試験と日本語能力試験に合格すれば最長5年の在留資格が与えられる特定技能について、活用を考えている旅館は73.9%と4軒に3軒を占めた。その理由を聞いたところ、「在留期間が長い」「長期にわたり雇用していきたいと考えているため」「インターンの場合1年なので、覚えたころには帰る。もっと長くいてほしいから」と、長期にわたる雇用が可能であることを挙げる旅館が目立った。
「幅広い業務に対応できる」「仕事の習熟度向上」「ほとんどの外国人はスキルアップをする努力が見られない。特定技能制度に(技能面の向上で)期待している」と、従来の在留資格ではできなかった業務への対応や、外国人材のスキルアップを期待する旅館も多かった。
半面、活用を考えていない旅館が17.4%、その他の回答が8.7%あった。「制度が不明瞭である」「内容がよく理解できていない」などのほか、「まだ始まったばかり」「もう少し情報を集めてから対応したい」と、様子見の旅館も見られた。
このほか「新制度への期待」「人材について訴えたいこと」を自由に記入してもらった。主な回答は次の通り。
「都市部だけでなく、地方でも外国人が働けるようにするには、既に働いている人の体験談を広く周知すること」
「地域で人材を回せるようなシステムがあれば助かる」
「手数料は取らないでほしい」
「紹介案内所のような窓口があればと思う」
「技能(試験)の中で、接客に関する日本語の読解力、表現力、作法を取り入れることを望む」
「全業務の労働をOKにしてほしい。現在は制限があるが、これをなくす」
「絵に描いた餅とならぬよう、現実的、実践的な制度であってほしい」
「日本文化、日本語、日本人に興味のある方との出会いを求めている」
「申請の簡略化」
「ビザ発行のスピード化」
「優良な仲介業者を知りたい」
「日本に来る前に日本語をもう少しマスターしてきてほしい。日本語の読解力で仕事に差がつく」
「数年間のしばりがほしい」
「(制度の)説明は受けているが、申請等、業務的なことが全然入ってこないので困っている」
「国、自治体が新しい登録支援機関を厳しく管理指導してほしい。過去の技能実習で悪質な履歴のあるところは排除する法律が必要である」
「外国人労働力をあてにしてはいるが、地域間で取り合いになるだろうし、働きに来る人も『金目当て』でもあろうかと思うし、いろいろな問題が噴出すると思うので、このあたりの整備が急がれる」
「地方への人材の紹介」
「質の良い人材が集まることへ期待」
「賃金の統一感を業界で決めること」
「制度緩和とはいえ、管轄機関は厳しく、ビザ申請(許可)の結果が出るまで時間がかかりすぎ。試験の回数、受験人数が少なすぎて人手不足解消になるのだろうか」
「非常に分かりづらいところがあるので、新制度自体の具体的な説明をしてほしい」
【森田淳】