北海道函館市で復元工事が進められていた五稜郭跡内の「箱館奉行所」の外装部分がほぼ完成した。外壁を保護する覆いがはずされ、140年ぶりに幕末当時の姿があらわになった。現場では観光客らが早くもカメラを向けるなど、新たな観光スポットとして期待が高まっている。現在は内装などの工事中で、来年7月に一般公開される予定。
江戸幕府が北方警備などの拠点として建設した城郭、五稜郭内には、1864年(元治元年)に箱館奉行所が完成し、蝦夷地統治の中心的役割を担った。1868年(明治元年)に旧幕府軍の榎本武揚や土方歳三らが占拠し、箱館戦争の舞台となったが、新政府軍に明け渡され、1871年(明治4年)に奉行所などの建物が解体された。
復元工事が進む奉行所は木造平屋で広さ約1千平方メートル。中央部には5層からなる「太鼓櫓」があり、高さは約17メートルに及ぶ。外壁は一部が漆喰塗りの下見板張り、屋根は瓦ぶきで太鼓櫓は銅板ぶきとなっている。
函館市が2006年から、発掘調査の結果や古写真、文献史料などをもとに、宮大工や左官職人らを集め、当時と同じ場所に忠実に復元を進めてきた。総工事費は石垣の一部修復も含めて約27億円。現在、壁の塗装や建具の取り付けなどの内装工事に入っており、来年6月末には完成。展示物を整備して7月29日から一般公開される。
地元の観光関係者は、「夜景と並ぶ函館観光の最大の目玉になる。多くの人に幕末のロマンを感じてもらいたい」と、新しい観光拠点の完成に期待を寄せている。
外装部分がほぼ完成した「箱館奉行所」