「職人×旅行」を連携させ、教育旅行商品化 東京都台東区・文化財の高付加価値化事業


神職が上野東照宮を案内

江戸文化を「学び」商品で継承

 東京都台東区は22年度、「上野東照宮から始める江戸たいとうサスティナブル 文化・歴史・伝統を紡ぐ観光地で学習体験 保存と継承を目的とした文化財の高付加価値事業」を展開している。上野東照宮を導入した文化財の保存に対する「学び」がテーマのツアーコンテンツを地域、旅行会社、広域DMOと連携して開発。江戸の文化資源を観光の入り口として活用しながら、次世代につなげる。

 

神職が上野東照宮を案内

 

 同事業は、22年度に観光庁が実施する「看板商品創出事業」の一環。上野東照宮の金色堂は国指定重要文化財として歴史的な価値が高い。事業では、神職からの講話や社殿内の特別拝観など高付加価値な体験コンテンツを作成。伝統工芸を継承する職人と旅行商品を連携させ、サステナブルが学べる体験型アクティビティとして看板商品化を目指している。事業として、有償観光ガイドスキルアップセミナーやモニターツアー、コンテンツブックの作成などが行われた。

 有償観光ガイドスキルアップセミナーは、計4回開催。1月15日に開催された第4回のセミナーでは「上野東照宮・一日学校の旅」をテーマに、社殿見学や講義、ワークショップなどが行われた。講義では、上野東照宮禰宜の嵯峨まき氏が、戊辰戦争や関東大震災、東京大空襲でも被害を受けずに残る上野東照宮の歴史や、平成の大修理などを例に文化財の保存と活用について説明した。

 台東区観光課の江畑州恒観光担当係長は「コロナ前には一線で活躍していた通訳案内士の話に、SDGsなどの話題が入ると深みが出る。持続可能な観光の視点を持つきっかけが作れた」と話す。また、参加後には、参加者の文化財への保護意識が高まったという。

 

江畑観光担当係長

 

 同日には、台東区民限定のモニターツアー「~通常非公開『金色殿』特別見学~『上野東照宮』を知る1日学校 日帰り」を併催。旅行代金は1人5千円で、クラブツーリズムが運営した。ツアーでは、上野東照宮ゆかりの徳川家康に関する歴史講座や、お化け灯篭や上野大仏、摺鉢山古墳跡の見学などが行われた。

 コンテンツブックは、教育旅行の営業ツールになることを目的に、文化財の保存と継承をテーマに教材化し、ウェブ版で制作。区内事業者の歴史や商品のストーリー、SDGs取り組みなどを紹介するほか、料金、時間、連絡先などを網羅している。掲載は16件。旅行の事前学習で使えるワークシートにもなっている。

 今後は、同事業を台東区全域に水平展開し、教育旅行などに結び付けることで、文化財への理解の促進、事業者への販路開拓支援、時間帯や観光地での観光客の分散化を目指す。

 江畑観光担当係長は、「台東区は23区で最も江戸を大切にしている。区内には多くの職人や江戸時代からの歴史や伝統を持つ事業者が多数いる。ガイドがストーリーを語ることで商品が観光としても成立するものは多い。来年度以降も地道に取り組みを進めていきたい」と述べる。

 

ワークショップの様子

 
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