
普段は多くの観光客でにぎわう道後温泉も豪雨による風評被害を受けている(道後温泉本館)
観光地は通常通り営業 「来ることが支援になる」
西日本豪雨の風評被害が各地で発生している。岡山、広島、愛媛各県の主な観光、温泉地は、豪雨による直接の被害がほぼないものの、宿泊などのキャンセルが相次ぎ、例年の5割程度の入り込みに落ち込むところが多い。関係者は「来てくれることが支援になる」と、観光客の来訪を呼び掛けている。
愛媛県の道後温泉では、同温泉旅館協同組合加盟の31軒と、道後温泉本館など外湯3施設が通常通り営業している。
ただ、31軒の宿泊キャンセル数が7月6日から16日までの11日間で6009人に上った。8月の予約は例年の半分程度という。8月は一昨年が10万人、昨年が9万人の宿泊客があった。「8月は一番の書き入れ時なので痛い」と同旅組。
しかし、鉄道などのインフラが徐々に回復しており、関西や岡山、広島方面からの客足の回復に期待を寄せている。
愛媛県では大洲市など南予地域で土砂崩れなど大きな被害があった。同旅組は、その復興が第一と強調しつつ、被害がなかった同温泉への多くの来訪を呼び掛けている。
道後温泉は8月1~31日に恒例の「夏まつり」を開催。また道後温泉本館が来年1月15日から、営業を継続しながらの耐震改修工事を始める。「その雄姿を今のうちに見ていただきたい」と同旅組。
日本三景の一つ、広島県宮島。今回の豪雨では、厳島神社など観光施設への被害は全くなかった。しかし、災害以降、観光客は約3割減っている。
8月25日に予定していた「第46回宮島水中花火大会」は、来場者の輸送手段の確保が困難と、中止となった。
ただ、ほかの観光は何ら支障がなく、宮島観光協会はホームページでその現状をアピールしている。
広島県の鞆の浦も、風評被害に悩む観光地の一つ。「事業者からの情報を集約すると、例年の4~5割という惨憺(さんたん)たる入り込み」と、ガイドの手配を行う鞆の浦観光情報センターの片岡明彦所長は話す。
同センターへのガイドの依頼は、ひと月に約50件入ってくるが、7、8月はキャンセルが相次ぎ、およそ半減しているという。
「現地は全く問題なく観光できる。多くの方にお越しいただきたい」(片岡所長)。
岡山県の湯郷温泉は、1軒の旅館で浸水被害があったものの、今は通常通り営業している。だが、客数は例年の約半分と厳しい状況だ。
同温泉旅館協同組合の峯平晃行理事長は、「県内の主な観光地に実害はない。遠慮せずに来ていただきたい。来て、お金を使っていただくことが復興につながる」と強調する。
同旅組の施設は、岡山県と県旅館ホテル生活衛生同業組合の災害協定に基づき、高齢者など援護が必要な被災者用に800人分の客室を確保。被災者支援に協力している。
岡山県倉敷市の倉敷観光コンベンションビューローも、美観地区、児島・鷲羽山地区など、市内の観光地が通常通り営業している点を強調。
しかし、ビューローが管理する美観地区の「倉敷市バス専用駐車場」の利用状況から、観光客がおよそ半減していると推測する。
対策のためビューローは、同駐車場の利用者に助成金を交付する制度を創設。具体的には、美観地区の観光目的の客が20人以上で、同駐車場を利用する団体・企業に対し、観光バス1台につき1万円を助成するもの。期間は8月1~31日で、100台を上限に助成する。
駐車場には同市で被害が大きかった真備地区の復興支援のため、募金箱を設置する。
普段は多くの観光客でにぎわう道後温泉も豪雨による風評被害を受けている(道後温泉本館)