「語り部シンポ」に国内外から150人 南三陸ホテル観洋で


あいさつする阿部実行委員長

命守る防災減災の方策探る

 東日本大震災などの災害を伝えるだけでなく、記憶や教訓を次世代への伝承に向け話し合う「第7回全国被災地語り部シンポジウムin東北~時代を超えて災害を伝える語り部~」が4日、南三陸ホテル観洋(宮城県南三陸町)で開かれた。震災から11年6カ月、災害ボランティアで訪れた人には当時をしのぶことが難しいほどまち並みなどの景観が大きく変貌する中、国内外から約150人が参加した。地域づくり、まちづくり、震災遺構の在り方の英知や知見を話し合った。次世代への伝承(縦の伝承)と地域間伝承(横の伝承)をさらに広げることにより「命を守り、命を守り続ける」防災、減災、備災についての方策を探った。1部は基調講話とパネルディスカッション、2部の3分科会では意見を交換。3部は閉会セレモニーとして分科会報告とシンポジウムの総括、語り部宣言が行われた。

 阿部隆二郎実行委員長(南三陸町地域観光復興協議会長、南三陸ホテル観洋副社長)はあいさつで、「全国シンポジウムが2016年南三陸町で400人の参加者から始まり、淡路市、熊本市、神戸市で開催し、今回7回目を迎えた。そのほか、東北フォーラムが3回の計10回のイベントを行っている。東北での開催の趣旨は『震災の風化を防ぎ、震災の教訓を次世代を担う若年層と、未被災地の人々に伝える』。各地域とのネットワークの拡大を願い、伝承活動を継続していく」と述べた。

 東北大特任教授の原口強氏が「歴史の中の自然災害の普遍性~津波と人間~」と題し基調講話の講師を務めた。原口氏は「日本では過去400年間で死者千人以上の大震災が26回発生、平均で15年に1回の周期で発生している」と指摘。その上で「自然は過去の習慣に忠実で、科学の法則とは自然の記憶の覚え書きであり、自然ほど伝統に忠実なものはない」と「歴史の中の普遍性」を語った。

 パネルディスカッションは「普遍的語り部は時代を超えて未来へ」をテーマに、大川伝承の会共同代表の佐藤敏郎氏(石巻市)をコーデネーターに行った。

 復興みなさん会代表の後藤一磨氏(南三陸町)は「災害とは切っても切れない関係。私たちが生きていく土台は地球であり、持続可能な社会をつくっていかなければならない」と指摘。

 リアス・アーク美術館館長の山内宏泰氏(気仙沼市)は「知らないことを前提に話すことと、知っていることを前提に話すことでは捉え方が違ってくる」と述べた。

 エフエフわいわい代表理事の金千秋さん(神戸市)は「自然災害のみならず人が人を傷つける災害(戦争)もあり、人間は何を大切に生きていくのか考えさせられる」と語った。

 コメンテーターの原口氏は「リアルとバーチャルなものを組み合わせ、後世に伝えていかなければならない」と訴えた。

 分科会では「教育の視点から考える次世代への震災伝承」「震災遺構の10年後」「KATARIBEを世界へ」―の三つテーマをもとに白熱した議論が行われた。

 シンポジウムに先立ち語り部バスが運行された。これまで案内した人は、個人客から企業、自治体などの防災学習団体、修学旅行生らに至るまで延べ42万人に上るという。語り部バスの重要性が増している。

 次回のシンポジウムは来年3月、和歌山県広川町の「稲むらの火の館」で開催する予定。

活発な意見が出されたパネル討論

あいさつする阿部実行委員長

 
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