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「食品衛生法等の一部を改正する法律」が6月13日に公布、同日から2年以内に施行される。改正の柱の一つは「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理を、食品を扱う全ての事業者に義務付けたもので、旅館・ホテルも対象だ。事業者は今後、いつまでに何をしなければならないのか。
HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point=危険要因分析重要管理点)とは、「事業者自らが、食中毒菌汚染等の危害要因をあらかじめ把握した上で、原材入荷から製品出荷までの全工程の中で、危害要因を除去低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理手法」(厚生労働省の資料)。
今までの食の安全管理は、最終製品を無作為に抽出して、菌や異物の有無などその安全性を検査する方法が一般的だった。ただ、これでは全ての製品を検査したことにならず、菌や異物混入の製品を客に提供するリスクをはらんでいた。
HACCPはそれと異なり、食品の製造工程のうち、特に重要な工程で、その状態を継続的に監視し、記録するもの。例えば、原料の入荷―保管―加熱―冷却―包装―出荷という流れの中で、加熱を重要管理点と認識した場合、その温度や時間を監視、記録する。
管理を「見える化」することで問題のある製品の出荷を未然に防ぐほか、万一事故が起きても原因の特定を速やかに行えるメリットがある。
世界では先進国を中心に制度化が進み、2006年にEU、11年に米国で導入を義務付けた。このほか台湾、カナダ、ブラジルは一部で義務付け。中国では導入を奨励している。
日本でも90年代から奨励されてきたが、食品製造業における普及率は16年に29%。大企業(販売金額50億円以上)は67%と普及が進むものの、中小企業は33%にとどまっている(農林水産省調査)。
HACCPの義務化で事業者が行うべきことは、まず衛生管理計画の作成だ。工程ごとに発生の恐れがあるリスクを分析。どの段階で、どんな対策を講じればリスクを消滅または低減できるかを把握する。
その上で重要管理点を決定。管理点ごとに「殺菌加熱温度は○○度以上、△△分以上を維持する」など、リスクを排除するための基準や、その測定方法を決定して作業を実施。数値や管理状況は定期的に測定、記録する。
ただ、リスクの分析などが困難な小規模事業者などについては、各業界団体が作成する手引書を参考に、「簡略化されたアプローチ」による衛生管理を行ってもよいとされている。旅館・ホテルもこれに該当する。
手引書は食品製造、飲食店、スーパーマーケットなどの業界で、既にいくつかが完成。厚労省のホームページでも公開されている。
旅館・ホテル業界では、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)のシルバースター部会が、この手引書の作成を今年度事業として実施。来年3月までに完成させる予定だ。
地域独自の取り組みも進んでいる。滋賀県はHACCPの理念を取り入れた独自の認証制度「セーフードしが(S―HACCP)」を創設。旅館・ホテルでは、びわ湖花街道、湯元舘、ビジネスグリーンホテル日野、料亭旅館やす井の4軒が認証を受けている。同県旅館ホテル生活衛生同業組合は、全組合員がHACCPに沿った衛生管理を行えるよう、9月から説明会、ワークショップを開く予定だ。
法律の施行は公布日から2年以内の政令で定める日。20年6月13日以前に施行される。
ただ、HACCPについては1年間の猶予期間を設けており、21年からの義務化となる見通しだ。