【〝税〟肉を落とす 賢い節税セミナー3】株と事業承継問題 髙村健一


 本紙購読者の方で中小企業のオーナー(株主)をされている方は多数いるかと思うが、ご自身の会社の株式の評価(金銭的価値)がいくらあるか、即答できる方はどれくらいいるだろうか。

 なぜ、このような話をするかというと、読者の皆さんがお持ちの自社の株式には財産的価値があり、相続税の評価の対象となり、場合によっては相続税を納めなければならないという事態になる。この話を聞いてドキッとした方も多いと思う。何せ、自社の株式なんてだれもお金を出して買ってくれないし、もちろん、売れない。

 名だたる上場企業の株式であれば、証券会社を通じて、保有している株式を換金することも可能だが、中小企業の株式は誰も買ってはくれない。絵に描いた餅に課税をするのだから、納税者からしたらたまったものではない。そして、一番問題なのは、個人の財産といえば自身の会社の株式だけという方だろう。

 最近、後継者などに事業を承継させる、いわゆる、事業承継問題が取り沙汰されているが、この中小企業の株式の承継もまた然りである。

 前述で、相続税の評価の対象と記述したが、例えば、この株式を後継者へ譲る際も、問題が生じてくる。例えば、会社を興す際に、1株5万円で設立したので、では、その5万円で後継者に引き継がせようとしても、そう簡単にはいかない。そう、その時点での財産価値を見繕わなければならないからだ。

 詳細は割愛するが、国税が定めた、財産評価基本通達というもので、中小企業の株式の評価がルール付けされている。非常に粗い言い方だが、現状の会社の資産から負債を差し引いた、純資産がその会社の価値と言える。

 ぜひ、読者の皆さんも、自社の貸借対照表をご覧になっていただきたい。そして、然るべきところに相談し、事業承継を円滑に進めてほしいものである。

(髙村税理士事務所代表、髙村健一)

 
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