岡本太郎発案の「大名焼」
第701回よその旅館ホテル
──旅館としての売りものは何ですか。
「源泉掛け流しの湯もありますが、一番となると食事です。魚や肉、野菜など地元の素材を使っています。静岡産で有名なところで言えば、桜えび、わさび、しいたけ、など。築地など大きな市場から仕入れた方が楽なのですが、地元の素材にこだわっていきます」
──具体的にはどんな料理を。
「一つは、創作会席です。いろいろおいしいものを食べたいという人向けで18品を提供します」「もう一つは、岡本太郎さんが発案し、命名した名物『大名焼』。地元の野菜を鉄板の下に置いて、イノシシ、牛、豚の3種類の肉を蒸し焼きにし、ポン酢で食べます」
──なぜ“大名”焼なのでしょうか。
「吉奈温泉は、古くから『子宝の湯』として有名で、徳川家康の側室『お万の方』も湯治に訪れていたからです。大名焼は、プラスチック製のちょんまげ、紙でできた裃を着けて食べるのが決まりなんですよ」
──お湯もまた自慢ですよね。
「吉奈温泉は724年には湧いていたと言われており、伊豆で一番古い温泉です。泉質の良さを生かすため、加水、加温をしない、源泉掛け流しにしているのですが、これがなかなかの苦労です。窓を開けたり閉めたり、約70度、47度、50度とそれぞれ湯温の違う3本の源泉の流入量を変えたりして、適温に調節しています」
──経営のモットーはありますか。
「創業して400年の宿。ここ数年、これまで長く続いてきた意味を常に考えながらやってきましたが、最近になってその基本はやはり温泉と食事だという結論に達しました」
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