【ちょっとよろしいですか 141】もはや避けて通れない「ひとり客」その受け入れのコツ 山崎まゆみ


 温泉と食のエッセイ集『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)が今年9月6日に発売となりました。温泉に食の要素を加えた既刊本『温泉ごはん 旅はおいしい!』(2023年4月刊行 河出文庫)が好評だったため、ひとり旅の要素を加えて書き下ろした1冊です。

 ひとり温泉についての本は、以前にも刊行しており、『おひとり温泉の愉(たの)しみ』(光文社新書)を出したのが2012年。この出版の10年ほど前の02年ごろから、私はひとり温泉を開始しましたが、それは出版業界の経費削減のため、取材費が1人分しか出してもらえず、ひとりで取材に行き、三脚を立てて、自らの入浴写真を撮影していたことがきっかけです。

 これが、よかった。気持ちの赴くままに動ける、その気軽さに、すっかりはまってしまったのです。

 ご存じの通り、かつては温泉宿に女性がひとりで泊まろうものなら、「自殺するつもりなのか」と心配されたりしました。しかしながら現在は、ひとり旅のニーズがどれほど増しているかということは、読者の皆さんなら周知の事実だと思います。いまや、空前の「ひとり旅」ブームです。

 よって、ひとり旅ならではの準備や宿選びのコツ、タイプ別マイ温泉の見つけ方などのノウハウを披露する『ひとり温泉 おいしいごはん』を上梓することになりました。もちろん、おいしい料理に舌鼓を打つ「おいしい旅」のエッセイ集でもあります。そして今だから提案できる”気軽さ”を打ち出しました。

 例えば、仕事の合間に楽しむひとり温泉であったり、出張先で前泊、延泊する技です。短い時間にひとり温泉でリフレッシュし、整えるコツをつづりました。「多忙な人こそ、より気軽に、ひとり温泉を!」と心底思います。

 実例として、都心・大手町にある大手町温泉「星のや東京」を会社帰りに寄り、リラックスしてフレンチを楽しむ。仙台出張の後に松島温泉まで足を伸ばして、カキを頬ばる。福岡出張で前泊して、むなかた温泉で活いかに感動する。秋田駅からバスで30分~40分の立地にある秋田温泉でババヘラアイスを食べる、などなどです。

 そんなひとり旅のニーズに応えるために、ひとり温泉に慣れた私から、宿泊業を営まれる読者の皆さんに五つのリクエストがあります。

 ●気兼ねなく利用できる、ひとりサイズの部屋(シングルルーム)があるとうれしい。宿泊料金は多少高くてもOK。

 ●食事処の工夫。ひとり客に寂しさを感じさせない作りにしてほしい。カウンターを設置していただけたら、なお良し。

 ●食事の量を相談できるシステムを! 先日、ビストロを併設する宿に宿泊し、夕食は洋風定食を、朝食にはフレンチトーストをいただき、少量でも良いというのが、新鮮な驚きでした。

 ●ひとり旅の場合、アクシデントやハプニングは自分ひとりで対応します。よって、自然災害や異常気象でアクセスがまひした場合や、体調を崩した際には相談に乗ってもらえたら心強いです。

 ●地域を紹介する書籍がそろうライブラリーの併設。ひとり旅はむくむくと好奇心が湧き出ます。だから名物のいわれや、地域の歴史文化を知りたくなります。その時に手にできる書籍があれば最高。

 以上、ご参考までに。

(温泉エッセイスト)

 
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