
1月29日に東京都が主催する「アクセシブル・ツーリズム 推進シンポジウム」が開かれました。
読者の皆さんにとっては、「アクセシブル」という言葉は聞き慣れていないかもしれません。私も「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」で表現してきましたが、世界的には「アクセシブル」(移動がスムーズという意味合い)が使われています。
東京都では、障がい者や高齢者など、移動やコミュニケーションにおける困難さに直面する人々のニーズに応えながら、誰もが旅を楽しめることを目指す「アクセシブル・ツーリズム」に取り組んでおり、その一環としてこうしたシンポジウムが毎年開催されています。
先日も、「情報通信社会におけるアクセシブル・ツーリズムの推進」をテーマにパネルディスカッションが行われ、手話のミニセミナーや関連企業の便利な商品やサービスを紹介する展示会など、企画が充実しており、多くの参加者が交流していました。
大変せんえつながら、私は「旅の達人が語るバリアフリーな家族旅行」という演題で、基調講演をさせていただきました。
読者の皆さんにおいても、おじいちゃん、おばあちゃんを囲んだ3世代・4世代旅行のニーズを肌で感じているのではないでしょうか。
令和6年度補正予算として、観光庁が「観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業」を実施します。
宿泊業の皆さんも興味を持たれる事業になると思いますので、宿泊施設をバリアフリーに改修する際に、必ず気を付けてほしいことを列記します。お心に留めていただけましたら、うれしいです。
バリアフリールーム、ユニバーサルデザインの客室(以下、UDRと表記)には、車いすを利用するお客さんが客室内を自由に移動しやすいように、広さが求められます。通常サイズの車いすだけでなく、大型の電動車いすなども自在に動けるためには、2部屋を1部屋にまとめてUDRにすることが多いです。
なおUDRの入り口、そして客室内のドア幅は80センチ以上は取り、90センチあればさらに安心です。
客室に温泉を引くと喜ばれます。その場合、浴場の上に湯船がのっているスタイルがベターです。これは対象となる足腰が弱ってきた高齢者などのお客さんに、極力、屈伸運動をさせないためです。
また車いすに乗ったまま使用できるように、洗面台の下は空間がある方がいい。
このように、主に客室の広さと水回りを十分に配慮し、改修してください。後は対象者が安心して滞在できるように、着脱式の手すりなどの備品を用意することが重要です。
人の身体の状態はそれぞれ。いわば人の顔のように、個性と捉えると、誰もが完全に利用しやすいUDRなどはあり得ません。ですから考え方の基本は、それぞれの体の状態に応じる「セミオーダー」です。
現在、好評なUDRを見ると、特別室として販売し、宿泊代金は少々高めに設定。そして一般のお客さんも泊まりたくなるデザイン性の高い設えにすると、稼働率が非常に高くなります。
広さが確保された客室で、温泉も引かれているのなら、インバウンドのお客さんも泊まりやすく、実際、外国人が利用する光景をよく見ます。
つまるところ、誰もが利用しやすくなるのです。
補助事業を活用して改修をお考えなら、思い込みで計画するのではなく、当事者に相談されることをおすすめします。
(温泉エッセイスト)
(2025年2月17日号連載コラム)