【ちょっと よろしいですか 114】観光業界のイメージ 山崎まゆみ


 さる6月22日、東急歌舞伎町タワーにて、日本旅館国際女将会令和5年度総会が開催され、私は会員ではありませんがご厚意で出席させていただきました。

 コロナを乗り越えた女将の皆さまに一言、「お疲れさまでした」と労わりの言葉を直接申し上げたく、参加しました。

 皆さんお変わりなくお元気でお美しく、お会いすることができてうれしかった。皆さま、よく乗り越えられました。

 一方で、直面している課題があまりにも深刻であることにも気づきました。

 観光経済新聞社の積田朋子社長による来賓のあいさつでも、日本ホテル教育センター理事長の石塚勉先生の乾杯のご発声でも、話題は「人手不足」「雇用の難しさ」でした。

 積田社長からは、佐賀県嬉野温泉大正屋さんが社員待遇改善の一環で、10連休を試みる事例のお話がありました。

 石塚先生からは、日本ホテルスクールへの応募者が半減。その理由は、子供たちが希望しても、コロナまん延期に観光産業が危うい印象を与えたため、親御さんが賛同しない。待遇改善に向けて、10%のサービス料を社員の給与に充当し、その分を価格に転化したらどうかという話がありました。 

 この総会の直後、ちょうど跡見学園女子大学で「観光温泉学」の授業がありましたので、本年度の履修生221名に、「観光業界で働くならどんな仕事を希望するか」「親はどう感じるか」と、この2点を率直に尋ねてみました。

 結果、顕著だったのは「待遇面を重視する」でした。「お給料、次に福利厚生が充実しているかどうかを重視する。仕事内容に見合ったお給料はもちろん、健康診断や産休、育休などの福利厚生が整っていないと安心して働けない」といった声が多かったです。

 親がどう思うかについては、「私の母は反対です。コロナ禍になりニュースでも観光業は大打撃を受け、観光業に就く人が解雇されることを知り、母は『安定した仕事(公務員等)で良い待遇の仕事に就きなさい』と言います」「忙しいという印象を持っているので賛成しない」などなど、残念ではありますが、石塚先生が指摘された状況そのままでした。

 ただ「観光温泉学」を履修していますから、すでにホテルや旅行会社に就職が決まっている、希望するという学生さんが3分の2ほどいました。そうした学生さんからは、

「お客さまに合ったプランやサービスを提供し、お客さまに感謝され、思いっきり楽しんでもらえるような旅を提供したい」「良い思い出になるようにお手伝いしてみたい」「人生の記憶に残る旅をプロデュースしたい」と、企画立案に積極的な意見が多かったです。

「日本各地の魅力的な地域に観光客を呼び込み、魅力を伝えていくためには宿泊施設は欠かせない存在であるからホテルで働く」「ホテルスタッフはお客さまのご要望に近づけるための工夫や細かい気遣いなどが必要だから希望する」と、サービス業の真髄を理解していたり、中には「老舗旅館の女将の仕事がしたい。女将はお客さまの目の前に立ち、常に最高のサービスを提供しているから、日々刺激的な体験ができるのではないか」といううれしい声もありました。

 やりたいことが明確な学生さんの親御さんは、「不安はあるが、本当にやりたいなら応援する」「自分が納得する就職を願ってくれている」と、本人の意思を尊重する印象です。

 加えて、「地域の人とつながることが観光には重要だから、地域の人とできる仕事を選びたい」「地域づくりがしたいから、自治体を希望」「観光地をまとめた雑誌やサイトなどを作成したい」と、観光産業をサポートする仕事に興味を持つ学生さんもいました。

 キャビンアテンダントやホテルウーマン希望者には、カッコイイ制服姿への憧れも抱いている様子で、働く人の見せ方も十分に考慮しなければならないと感じました。

 こうしたヒアリングを通して私自身も、221名という多くの履修生に観光業界で働く魅力をリアルに正しく伝えることがいかに大切か、という気付きになりました。

 こうした学生さんの声が、読者の皆さんのお役立ちになれば幸いです。

(温泉エッセイスト)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒