宮崎県観光協会さんから「令和4年 ユニバーサルツーリズム研修会」の講師として呼んでいただきまして、宮崎県の宿泊事業者さんに向けて、「明日から、直ぐに取り組めるバリアフリー」をテーマに質疑応答を含めると2時間ほどお話ししてきました。
宿泊業の皆さんにとってはバリアフリーというと、「大規模改修が必須で、お金がかかる」という印象が強いようですが、床をフルフラットにして、手すりを付けることだけが全てではありません。もちろん「広いスペース」と「使いやすい水回り(お風呂、洗面台、トイレ)」は必要になりますが、実は最も大切なのは「歓迎の意思」と「あると便利な備品」です。
現在、全国の人口比率で65歳以上が29%に対し、宮崎県は33%以上。そんな宮崎県においては、県内の高齢者が家族で旅行しやすい環境づくりはとても大切という話をしました。
このセミナーに当たり、2泊3日で宮崎県に滞在し、さまざまな体験をしてきました。
宮崎県のキャッチフレーズは「日本(にっぽん)のひなた」。陽光はキラキラ、人は明るく開放的で、素敵な人たちと出会いました。
たくさんの楽しく興味深い出来事の中でも、宮崎の玄関「宮崎ブーゲンビリア空港」が心に残りました。
「宮崎ブーゲンビリア空港」は花と神話をテーマにしています。南国リゾートが体感できるように、空港内にはブーゲンビリアの花が咲き、それらは社内で結成した“グリーンキーパー”の皆さんが管理し、自社栽培しているそうです。1階のイベント広場の正面には、宮崎の日向神話のステンドグラスとからくり時計が設置されていて、3階通路には神話の解説が示されています。
また飛行機に乗らずとも、空港を楽しみに来る地元の方が多いのが特徴とのこと。
それも、飛行機の発着を見に来るだけではなく、1階のイベントスペース「オアシス広場」が目的なのだとか。このスペースでは、宮崎の情報が常に発信されており、例えば工芸品の展示、冬の風物詩の大根やぐらを立てたり、ブーゲンビリアが満開になる5月にはブーゲンビリアの森を設置するなど、年間300日はイベントを開催しています。
宮崎空港ビル株式会社・常務取締役の大坪篤史さんは、「観光客にも地元の方にも、宮崎の今を知ることができるショールームでありたいと思っています」とおっしゃいます。そのために令和3年4月に「地域活性化推進課」が設置され、「観光物産企画班」「イベント企画班」「県内ツアー企画班」「情報サービス企画班」「新規事業企画班」の五つのチームが推進します。
さらに私が最も驚いたのが、防災啓発事業です。大坪さんは「南海トラフ地震がやってきたときに、1人でも死者を減らしたい」と並々ならぬ気持ちで取り組んでいます。空港は、宮崎市の民間の津波避難施設第1号に指定されていますが、現在は、空港の敷地内に「津波・水害対応型救命艇」が展示され、いつでも見学できます。空港内では防災グッズの紹介や発売もしています。空港で防災啓蒙とは!
ちなみにユニバーサルデザインの観点では、授乳室や子供用トイレは使い勝手がいいだけでなく、壁画などのデザインが南国風でかわいらしかったことも記憶に残りました。
空港を出て、日南方面に車を走らせると、道路中央にはすっと背の高いヤシの木が植えられていて、ヤシの葉は青空に向けて元気いっぱいに広げています。かつて「日本のハワイ」と呼ばれ、ハネムーンでにぎわった宮崎県。玄関口から南国ムードが漂うことで、旅情が増しました。
(温泉エッセイスト)