【にっぽん銘菓の旅7】千年の都・京都市(京都府) 彩、風味、雅な「夷川五色豆」 中尾隆之


彩と味で人気の縁起菓子

大豆、小豆、インゲン豆など豆は米、麦、粟(あわ)、稗(ひえ)とともに五穀の一つ。炒ったり、ゆでたり、砕いたり、いろいろに食べられる。

 なかでも大豆は味噌(みそ)、醤油(しょうゆ)、納豆、豆腐など日本の食事に欠かせない“畑の肉”と呼ばれる貴重な食材。また小豆は大福、饅頭(まんじゅう)、どらやき、おはぎの餡(あん)など菓子店には必須の品目である。

 煎(い)った青エンドウ豆に5色の糖衣をかけた華やかな「五色豆」と呼ばれる豆菓子もある。その発祥は明治前期の古都・京都。最盛期には20店ほどが競い合い、「八つ橋」に並ぶ京都土産として大いに売れた。

 多種多彩な菓子の出現で専門店は祇園南座向かいの十六五(とおろくご)や三条大橋西詰の本家舩はしやなど数軒になったが、雅な色合いと昔ながらの風味が京都土産として今も根強い人気がある。

 中で代表するのが明治前期に豆雑穀商から豆菓子店に転じた豆政(まめまさ)の「夷川五色豆(えびすがわごしきまめ)」。初めは白い糖衣だけだったが、初代が鴨川の清流にさらす京友禅の優雅さをヒントに、宮中五節会(ごせちえ)に使われる瑞色(ずいしょく)の青、赤、黄、白、黒の色になぞらえて創製。

 色は大地を象徴する木、火、土、金、水にちなむ。青(緑)には青海苔(のり)、黒(茶色)には肉桂を用いていて、それぞれにすがすがしい風味が楽しめる。

 5代目当主の角田潤哉さんは「香りのいい青エンドウ豆を3日間水に浸し軟らかくし、緩やかな火でじっくり焦げないように軟らかくなるまで煎り、さらに5日間に5回ほど砂糖掛けを繰り返す」という。

 いくつか一緒に食むとポリポリの歯応えとともに、それぞれの風味を秘めたすがすがしい香りと上品な甘さが混じり合って、なかなか手が止まらない。

 他にお薦めは、大豆や青大豆の粉に砂糖や水飴(あめ)を加えてよく練ったものを小さく丸めて3個串で通した「すはまだんご」。軟らかな五色豆といった感じで、懐かしい甘さに舌が和む。

 豆政が明治後期に京都駅で立ち売り販売。京都土産として「五色豆」の名が全国に知られた。豆政では差別化のため、京都御苑の南の“家具の街”の夷川通にあることから「夷川五色豆」と商標登録。“まめまめしい”、“豆で達者で”など縁起菓子としても人気が高い。(紀行作家)

 【メモ】「夷川五色豆」=豆政(075・221・5211)。230グラム木桝入り1箱税込み1180円、125グラム袋入り475円。


彩と味で人気の縁起菓子


至近の京都御苑堺町御門


(2025年2月10日号掲載コラム)
   

 
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