この春、さまざまなモノの値上がりラッシュが起きている。エネルギーに始まり、食料品、飲食店などさまざまなジャンルに及んでいる。「ローソンのからあげクンが発売以来36年間で初めての値上げ!」などはマスコミでも取り上げられる事態となった。資源高や原材料費の値上げに起因しているが、今後この流れはさらに続くと想定される。
ここで、ふと真剣に考えたいのが「はたして値上げは悪いことだろうか?」ということである。もちろん、現在の状況は所得水準が変わらないままに物価高が進行する、いわゆるスタグフレーションの様相を呈しているので、決して良い値上げであるとは言えない。ただ、強制的に値上げをせざるを得なくなった今だからこそ、真剣に「プライシング」について日本も考えるべき時なのではないかと感じるのである。
昨今、「安い国ニッポン」ということが盛んに叫ばれている。端的に言うと、世界標準と比べて、日本だけが所得水準も物価も上がっていない。つまり、いつのまにか、相対的に日本はヒトもモノも安い国になってしまったということである。これはコスト圧縮を続けて、頑張り続けてきたという見方もできるが、一方で値上げをするという努力を怠ってきた結果でもある。モノやサービスには適正価格というものが存在する。価値の高いものは価格も高いというのは至極真っ当な話である。
一連の値上げラッシュの中で、日々料金が変動する宿泊業界は取り上げられることはなかったが、それでも客観的に見て、提供している商品に対して、価格が安いと感じることが多くある。
加えて、今後は「人手不足により満室にできる日が少なくなる」「旅行の個人化で1室あたりの同伴係数が減少する(=宿泊人数減少)」などの事象が起こり得る。従って、いよいよ単価アップ施策が待ったなしの状況になってきたと感じている。次号以降で、宿泊業界における単価アップの考え方や事例を通して、プライシングや値上げについて考えていきたい。
それまでの期間にぜひとも、自施設の価格が適正価格なのか、値上げするにしても原材料費の増加分だけの値上げが適正なのかという点について深く考えておいていただきたい。
(アビリブ・プライムコンセプト取締役 内藤英賢)