4月以降のインドにおける新型コロナウイルス感染症の感染再拡大については、日本でも報道されたのでご存じの方も多いであろう。その後、政府により主要都市の大半で外出禁止等の強力な措置が取られた結果、5月上旬に40万人を超えていた1日当たり新規感染者数は、約4.8万人(6月末時点)と10分の1近い水準まで改善している。特にデリーの感染状況の改善は著しく、ピーク時に2.8万人/日を超えた新規感染者数は約94人/日(同)まで減少するなど事態は沈静化しつつある。
感染状況の改善により経済活動も再開し始めているが、昨年3月末に政府が発令した定期国際航空便の離着陸停止措置は現在も継続され、政府が認めた臨時便のみが運航可能だ。日本側でもインドを変異株流行国に指定して検疫措置を厳格化していることから、インドからの訪日は事実上ほぼ不可能となっている。
そこで、コロナ後の国内・海外旅行の動向について、大手旅行会社トーマス・クックと傘下のSOTCトラベルが実施した調査結果をもとに考察してみよう。この調査は6月にデリー・ムンバイなど主要都市に住む4千人の消費者を対象として実施されており、昨年12月にもほぼ同様の調査が行われた。
まず「旅行の再開時期」について、69%の消費者が「年内(2021年)」、31%が「来年(2022年)」と回答している。昨年(2020年)12月の段階でも67%が「半年以内の旅行再開を希望」と回答しており、コロナ第2波に見舞われた状況においても、消費者の旅行意欲が引き続き高いことが分かる。また、「希望する旅行先」については、「海外」が54%となっており、12月の調査結果(48%)よりもさらに高くなっている。
「一緒に旅行する人」については、「1人、カップル、家族・友人」が83%(12月=85%)、「グループツアー」が18%(12月=15%)と、12月とほぼ同様の結果となっており、引き続き不特定多数との同行を避ける傾向が見られる。
そのほか、「旅行の際の重要な要素」として「衛生管理・安全性」を挙げる人が70%となっている。12月の結果(75%)よりは減少したものの、引き続き高い数値と言える。また、「旅行の手配方法」について77%が「旅行代理店経由(対面・オンライン等)」と回答しており、旅行時の衛生管理等についての情報を信頼できる相手から入手したいという消費者の意向が反映されている。
以上、主な調査結果を紹介したが、日印間の航空便の再開時期は見通せないものの、消費者の旅行意欲は引き続き旺盛であり、消費者は新たな旅行スタイルを模索しながら旅行の再開を待っていることが分かる。コロナ禍を経たインドの消費者は、今まで以上に安全や衛生管理についての関心を高めていることから、日本の交通機関、宿泊施設、観光施設などによる安全や衛生管理についての取り組みは、インド市場において重要なアピールポイントとなるであろう。