【オマツリジャパンの毎週祭日 110】春日部で保存される念仏踊り トラベルライター・大林等


春日部で380年受け継がれる「やったり踊り」

やったり踊り(埼玉県春日部市)

 全国各地には地域の風土や生活の中から、多種多様の民俗芸能がうまれた。埼玉県東部の春日部市では約380年にわたって、「やったり踊り」というユニークな踊りが受け継がれている。

 江戸時代に大畑村は近隣の備後村と、収穫量の少ない不毛な土地を巡って争うようになり、相撲によって決着をつけることとなった。闘技では大畑村が勝利し、不毛な土地は備後村の所有となったのだ。重い年貢を免れることができた大畑村の農民が、「ヤッタリナー、ヤッタリナー」と囃(はや)し立てながら踊ったことが「やったり踊り」の起源と伝わっている。

 地域の人々が長年にわたって守り続けてきた県内でも珍しい念仏踊りは、埼玉県の指定無形民俗文化財に登録されている。伝統の踊りが年に1度舞われるのは、毎年7月15日に近い土曜日だ。午後8時ごろに大畑地区に建立されている浄土宗の寺院、西光寺から笛や太鼓のお囃子(はやし)に合わせて踊りを舞う「練り込み」の行列が大畑香取神社に向かう。約300メートルの道中には、そろいの浴衣に赤の上げ鉢巻、白足袋に赤い鼻緒の草履を身につけた踊り手の長い行列がつながる。

 踊り手たちが神社に到着すると、まず「扇子踊り」の奉納が行われる。小学校1~3年生、小学校4年生~中学生、若衆の三つのグループに分かれ、順に扇子を手にして数分間の踊りを披露する。「ヤッタリナー」の囃子詞とともに、体を前後に大きく屈伸しながら手に持った扇子を前に突き出す動きがとても特徴的だ。続いて「手踊り」が奉納される。お囃子の調子には少し哀愁が漂うが、踊りがもつ躍動感を失うことはない。「手踊り」も、小学校1~3年生、小学校4年生~中学生、若衆の三つのグループに分かれ順番に舞われる。

 「やったり踊り」の規模は大きくはないが、地元の人々が小学生から大人まで世代を超えて、伝統を守り続けている姿に共感を覚え、エールを送りたくなることだろう。

(トラベルライター・大林等)

【オマツリジャパン】
日本初の祭りサポート専門会社。「祭りで日本を盛り上げる」を目標に掲げ、祭りのコンサルティング、プロモーション、日本最大級のWEBプラットフォーム運営など、地方創生に取り組む。https://omatsurijapan.com

春日部で380年受け継がれる「やったり踊り」

 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒