山形花笠まつり(山形市)
山形県の県花と言われて、ぱっと答えられる人はどのくらいいるだろうか。この県花が山形市内に大輪の花を咲かせる日がある。それが東北四大祭りの一つとして知られる「山形花笠まつり」の日だ。踊り手が持つ花笠は、すげ笠の上に赤い花飾りが添えられたものだが、実はこの花が山形県花の紅花をかたどっている。
山形と紅花、実は深い関係がある。紅花はその名の通り赤い色を出す染料として重宝されてきた花で、時には冷えや血行を良くする生薬としても用いられてきた。この紅花、明治以前に日本一の産地だった場所が山形なのだ。ではどれくらい山形で紅花が採れていたかは「最上千駄」という言葉がよく示している。千駄とは馬が千頭で運ぶくらいと言う意味だが、その生産量の多さを感じられる。そんな紅花を乗せた花笠が、お祭り期間中は山形市内を彩る。
「ヤッショ、マカショ!」、花笠まつりにはこの掛け声が欠かせない。花笠まつり初日の8月5日、山形市内の大通りでは多くの花笠を持った踊り手が威勢のいい声を上げている。「花笠音頭」に合わせて、老若男女問わずたくさんの人が楽しそうに踊っているのが特徴的だ。自衛隊の男衆がピシッピシッと踊ったかと思えば、色鮮やかな着物での華麗な女踊りも続く。踊り手のグループは次から次へと大通りを進み、1日で約5千人も踊るのだそうだ。美しく、時に勇壮な花笠まつりの踊りはいつまで見ていても飽きがこない。
花笠もいいが、山形は一歩路地に入るとディープな街が広がりおもしろい。山形大学や東北芸術工科大学がある学生街のためか、おしゃれなカフェやバーが点在するというのも歴史と文化を感じられ、冒険心をくすぐられる街だ。もちろんご当地の食を提供してくれる居酒屋もあり心強い。路地裏では芋煮や玉こんにゃくを売りにしている店が並び、山形の銘酒が進んでしまう。最後は夏らしく、冷たいつけ汁で田舎風にやや太く切った名物の山形そばで締めるのも良い。
(お祭りトラベラー・髙橋佑馬)
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色鮮やかな衣装で華麗に舞う「女踊り」