野沢温泉道祖神祭り(長野県野沢温泉村)
ペーパードライバーにもかかわらず、移動手段に車を選んだ。例年にない雪不足に見舞われた2020年1月。道路がアスファルト色をしているうちは、私でも運転できると踏んだのである。ウインタースポーツが盛んな長野県野沢温泉村。例年であれば、雪深いこの地に運転して行くなどとは考えもしなかっただろう。
全国的にどんど焼きや左義長と呼ばれる小正月の行事が行われる中、ここ野沢温泉村で毎年1月15日に行われる「野沢温泉道祖神祭り」もまた、小正月の行事の一つである。その炎がひときわ大きいことから、近年では外国人観光客にも人気の祭りとして知られるようになった。
祭りの主役は、地元の厄年の男性。「三夜講」と呼ばれる厄年の男性たちの組織によって、運営の一切が取り仕切られる。祭り会場の中心に建設された「社殿」もまた、厄年の男性たちの手によって組み上げられたもの。高さ10メートル、幅8メートルもの大きさは圧巻だ。この社殿を巡って、火を付けようとする村人と、させまいとする厄年の男性たちとで激しい攻防戦が繰り広げられ、最後には燃え尽きると聞くと、なんだかもったいないような気がしてくる。
いざ現地に到着すると、雪不足で観光客が少ないというニュースはうそではないかと思うほど多くの人でにぎわっていた。夕刻、「火元もらい」の儀式が始まる頃になると、降らなかったはずの雪が降り出した。聞けば祭り当日には必ず雪が降ると古くから言い伝えられているらしい。まさに恵みの雪である。
降り出した雪は次第に吹雪へと変わった。吹雪が視界も、体温も奪っていく中、炎はいよいよ大きくなり、社殿へと迫っていく。こうなると雪と炎の攻防戦だ。
祭り会場には、厄年の男性たちが歌う「道祖神歌」がこだましている。その歌声に鼓舞されるようにして必死で寒さをこらえた。降りしきる雪と、巨大な炎。その幻想的な光景にただただ圧倒されながら、社殿が燃え尽きていく様子を見つめていた。(信州のお祭り盛り上げ隊・和光利香)
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激しい攻防戦の末、炎に包まれる社殿