観櫻火宴(長崎県雲仙市)
桜、花ひらく春。
「弥栄(いやさか)、弥栄、弥栄…」と雲仙に轟く掛け声。200人近い勇壮な武者が轟々と燃え盛るたいまつを手にして行列を織りなす。ここは、長崎県雲仙市千々石(ちぢわ)町。毎年3月下旬に開催されるのが日本一のたいまつ武者行列「観櫻火宴(かんおうかえん)」である。400年以上前、龍造寺家が島原半島の島津領へ上陸した際の攻防を再現した祭りの様は、まさに歴史絵巻を眺めているかのような心地に浸ることができる。
甲冑(かっちゅう)を身に付け、祭りを彩る武者は一般募集されており、地域内外から広く参加者を募っている。私もそのうちの1人だった。当日は千々石町の方々が温かく参加者を迎え入れ、町内にある中学校の体育館で甲冑を着付けてくださった。どこから来たのか尋ねられ、「東京から来たのです」と答えると、皆驚いているようだったが、「せっかく来たのだから良い思い出を作っていってね」と、着付けてくださる手にグッと力が込められた。ヨソ者の私だったが、やはり地域の方々との交流を通じて、祭りが、地域が好きになる。
無事に着付けも終わり、私も1人の甲冑武者として出で立つ。そして、たいまつの重みを感じながら、当時侵略を受けんとする祖国を守ろうと奮い立った島津家の武者たちに思いをはせる。武者たちが掛け声として叫ぶ「弥栄」は、ますます発展する、さらに繁栄するという意味が込められているという。
地域に迎えられ、立派な1人の武者として参加させてもらったからには、私は人一倍声を上げて盛り上げねばと意気込む。ふと周りを見れば、稚児武者・元服武者として参加している地域の小学生や中学生の子どもたちが皆精悍(せいかん)な顔つきである。
武者行列は桜満開の橘神社へと行進を続けた。橘神社の拝殿に着くと、その場にいる武者、武者を見守る家族や観覧客全員で一斉に「弥栄」と勝どきをあげる。轟く歓声を聞きながら皆一体となっていく感覚。私はますますこの祭り、地域のことが好きになった。
(お祭り男・菅原健佑)
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「いやさか」の掛け声とともに出陣する武者