大住隼人舞(京都府京田辺市)
京都府京田辺市の指定無形民俗文化財「大住隼人舞(おおすみはやとまい)」は、岩戸神楽と並ぶ日本民俗芸能の二大源流といわれている舞だ。毎年10月14日に天津神社と月読神社の例祭、宵宮に奉納される。舞の名前となっている大隅隼人は、約1300年前に九州南部の薩摩・大隅地方から京都府京田辺市大住に移ってきた。「おおすみ」が地名転移し、九州の「大隅」が京都の「大住」になったといわれる。
舞の所作は「日本書紀」の「海幸彦・山幸彦の物語」に由来する。物語は、兄の海幸彦の大切な釣り針を弟の山幸彦が海に落としたことがきっかけで始まる。海の底に釣り針を探しに行くと、そこで海の神・トヨタマヒメと出会い、山幸彦は結婚。海の中で3年の月日がたった頃、やっと弟は兄に釣り針を返却した。しかし、なぜか豊作の弟の畑と違い、兄の畑は不作が続く。これは呪いだと怒った兄が剣を振るうと、海の神の力により不思議な海水の満ちた球体が現れ、兄はその中で溺れてしまう。助けを請い、弟へ永遠の忠誠を誓う兄…。
大住隼人舞は、この海幸彦が溺れる様子を表現している。
基本構成は次の六つの所作からなる。
足占(あしうら)=水が足下に打ち寄せて思わずつま先立ちになり、水を避けようとする様子。
足挙げ(あしあげ)=水がくるぶしまで来て、あわてて逃れようとする様子。
走せ廻り(はせまわり)=水が腰まで押し寄せ、懸命に逃れようとする様子。
腰捫り(こしもじり)=腰をもじりながら海水をかきわけて必死で逃れる様子。
手を胸におく=海水が胸まで浸かり、恐ろしさで夢中に祈る様子。
飄掌(たびろかす)=海水が首から顔のあたりまで増え、溺れる寸前で助けを求める様子。
溺れた様子の舞だという由来を知ると、少しかわいそうな気がする。
他には盾や弓を持った狩猟に由来する勇ましい「松明の舞」と個性的な舞が見られる。
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10メートル四方の舞の庭。蹴り上げ動作が多い