おんだ祭り(奈良県明日香村)
「見に行くとお尻をたたかれる」。そのような奇怪な内容で知られているのが、奈良県明日香村で毎年2月第1日曜に催される「おんだ祭」だ。
おんだ祭の序盤に行われる「厄払い神事」では、出店が並ぶ「飛鳥坐神社(あすかにいますじんじゃ)」周辺を翁(おきな)と天狗(てんぐ)面の人物が徘徊(はいかい)する。
そして、ターゲットを見つけるやいなや、手に持った竹棒で「バシンッ」とその臀部(でんぶ)を打ち据える。これがかなり痛い。打撃による強烈なしびれで姿勢がふらついて、そのまま転倒するんじゃないかというぐらい。手加減なしだ。
たたかれる対象はほぼ無差別。近くにいるとまずたたかれるし、遠くにいても近寄ってきてたたかれる。カメラを向けるとポーズをとってくれるが、その後、必ずと言ってよいほどたたかれてしまう。同じ人間が複数回たたかれることもある。例外的に子どもには優しく、お尻をちょこんと触れる程度で済ませてくれる。
こうしたある意味バイオレンスな催しは、厄を払う意味を持っており、獅子舞に頭をかませる新年の行事をほうふつとさせる。このお祭りは古来より五穀豊穣や子孫繁栄を祈るための神事として行われてきたとのことだが、いつ誰が始めたのかはほとんど分かっていない。ただし、その独自性は「奇祭」と呼ぶにふさわしいものとなっている。
一通り厄払いが終わると、神社本殿にてこの祭りの主事である「御田植神事」と「夫婦和合」の儀が行われる。前者は天狗と翁、そして牛が田植えの様子をユーモラスに再現。そして後者は、天狗とおたふくが性交するさまを面白おかしく演じてみせる。
仮面をつけた人間が拝殿前で繰り広げるその光景はなんとも強烈で、一度見ればそうそう忘れることはできないだろう。最後は観客に向かってたくさんの小餅がまかれるが、この際いっしょに投げられる「ふくの紙」は子宝のご利益があるとされている。
(北摂のカメラマン・岩崎隼人)
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強烈な厄払いの一撃が決まった