【コロナ新時代への提言】日本ホテル社長・日本ホテル協会副会長 里見雅行氏


里見氏

求められる価値は何か

 訪日インバウンドの消滅に加え、新型コロナウイルス感染症の増加が繰り返されるたびに人の流れが抑制されるため、ホテルは売り上げ低迷から脱却できず、経営悪化により大変な苦境に陥っている。その状況でも、ホテルは安全で安心して過ごせる空間を提供するという社会的役割を果たすとともに、海外帰国者の一時滞在や宿泊療養施設の提供など政策への協力も行ってきた。

 残念ながら閉館を余儀なくされたホテルもあるが、各ホテルは今も必死の取り組みを進めている。サービスに工夫を凝らし、衛生対策を充実させ、ステイケーションやワーケーションの提案、サブスクリプションの設定なども行われている。

 現在日本ホテルが運営する「東京ステーションホテル」は106年の歴史を持つ。決して揺るがずに伝統を守りながら、時代の荒波を超えて、環境に対応した顧客満足のあり方を追求してきた。9年前の東京駅丸の内駅舎保存・復元に伴うリニューアル工事で生まれ変わり、スモールラグジュアリーホテルとして多くのファンの方に親しまれている。一方で昨年竹芝に開業した「メズム東京、オートグラフコレクション」は、東京のウォーターフロントでお客さまの五感を魅了することを目指した新しく個性的なサービスが話題になっている。対照的な二つのホテルだが、ホテルに何が求められるかをスタッフが徹底的に考えてきたことは共通だ。

 お客さまの声は、直接のご意見もネットに掲載されるクチコミもすべて貴重だと思う。ここに重要な情報が詰まっている。コロナの影響で、最近は重視される視点に若干の変化が感じられる。新しいサービスを直接ご提言いただくケースは少ないが、ヒントがある。

 ポストコロナを見据えてホテルから新しい提案をする場合には、それがお客さまの潜在的に求めるものに合致するかどうか、試行錯誤しながら確認する必要がある。しかし、具体的なサービス内容はともかく、お客さまが求める価値は何かを正確に把握することが極めて重要であることは間違いない。清潔に過ごしたい、日常生活を離れてゆっくり過ごしたい、胸ときめく発見をしたいなど、いろいろな価値がありうる。どのような価値を実現するかが私たちに問われていくことになる。これからの時代に求められる価値をしっかりと把握する努力を続けなければならないと思う。

 コロナ禍の今、需要は国内のみだが、今後のある時期には必ず訪日インバウンドが回復に向かう。アジアでもそれ以外でも、日本への関心は強いと聞く。日本のアニメを含め、コロナ前に人気を博していたものも多くあった。これからは何に関心を持ってもらえるのか、日本の各地域から諸外国に向けて何を提案すれば期待に応えられるのか、訪問先の日本に求める価値についてできるだけ多くの情報が示され、関係者の間で共有できれば良いと思う。

 
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