2019年までの約10年間、私は楽天トラベル営業責任者を勤めた。東日本大震災からの復興、訪日外国人客の増加、わが国の観光立国戦略の中で宿泊市場は順調に拡大。しかし、まさか、東京オリパラの年にこのような事態になるとは想像もしなかった。
年間のべ宿泊者数(観光庁調査)は、2012年の4億3950万人泊から2019年には5億9592万人泊と年平均4.45%の高い成長を実現。ところが、2020年には3億480万人泊と前年比でほぼ半減してしまった。
コロナ禍による緊急事態宣言発出によるGW、夏休み等の需要消失は、宿泊施設の経営に大きな影響を与えている。
現在、私は全旅連アドバイザーや、中小企業診断士として、いくつかの企業のお手伝いをしながら、このコロナ禍にいる。
昨年来、関わりのある企業でも、まず資金調達の手配、雇調金・給付金等の申請、そして予測の立てにくい売り上げ見込み等と日々格闘している。この1年あまりの期間で中小企業経営において、痛切に感じたことがある。日常からの経営管理の仕組みづくりが重要であるということだ。
予想よりもコロナ禍は長期化している。さらなる資金調達や現状の財務の見直し等が発生するかもしれない。その際、必ず事業計画が必要となる。この計画を実のあるものにするには管理会計が欠かせない。経営者にとって、最重要な羅針盤だ。土地や建物に投資をし、人によるサービスを前提とする宿泊業は費用における固定費率が高いビジネスであり、損益分岐点も高くなる。管理会計による「部門別」変動損益計算書、キャッシュフロー予測等の作成は必須ではないだろうか。
計画できる費用を使って、売り上げを改善。予測と違えば、修正を繰り返す。この仕組みを素早く展開していくことが求められる。
経営者の皆さまには、釈迦(しゃか)に説法な話だと思う。
しかし、非日常の今こそ、再度点検をされる時期ではないかと思っている。
(全旅連アドバイザー・羽室文博)
◇ ◇
【委員会より】
財務の問題というのは、通常、お付き合いのある金融機関や税理士さん等と共有されているでしょう。だが、経営者として気になることをダイレクトに相談することが難しい場合もあるでしょう。そんな時、相談をできる相手がほしい。
全旅連ポストコロナ調査研究委員会では、ネットを介して、専門家をご紹介する仕組みを用意しています。YOROZUYA JAPAN(https://travel.yorozuyajapan.jp/)。早め早めのアクションも重要では、ないでしょうか。