「ホテルとはヒューマン・タッチのビジネスである」。これは私共のとあるホテルの総支配人が人材育成の会議の中で述べた言葉です。
現在、2019年に施行された「働き方改革」とはまた違う、働き方が大きく求められています。ちまたではDX構造改革をはじめとしたHRテックを駆使した人材育成への取り組みが至るところで行われていますが、私もそのシステム開発の担当者の1人です。人財が保有する能力の見える化を図りながら、成長を「売上」、教育コストを「経費」、業績・CS・ESを「利益」とする三位一体の人財育成の損益化をシステム開発しています。
とかくホテルにおいては他業態と比べ、その本業の利益率はそうそう高いものではなく、ラグジュアリーホテルになればなるほどそれはさらに難しくなります。そのためにはご多分に漏れず、当社でもさまざまな効率化を図っていますが、その効率を属人的な能力だけでカバーするには限界がきています。
また、相乗してこのコロナ禍は人の見方や考え方まで変えてしまった。今やテレビを見るとコロナに関する情報を目にしない日はなく、その内容とくれば、今日の感染者数などの統計行動の指針となるエビデンスのオンパレードです。
そんな中、当社において来年度は約400名近い新入社員を受け入れる予定ですが、彼ら彼女らはこの約2年間、自分たちの考えや行動の方向性や判断をその統計やエビデンスに委ねてきたと言っても過言ではないかもしれません。それは教えの場においても根拠のない「頑張れ」「大丈夫だ」はもう通用しないことを予期させます。だから今、科学化という名のマネジメントが必要なのです。ましてホテル産業に限らずハイパフォーマー人財の採用、定着は至難の業であり、悠長に入社後の様子を見ながらホテルマネジメントを、などと言っている場合ではありません。
幸いにも当社では前述した人材育成システムをコロナ禍前から開発・導入を進めたことにより徐々にではありますが人財の成長に要する教育項目、学習時間、教育時間が分単位で可視化され、ただ「教えました」から「適正教育とは何か」がやっと見えてきたところです。
その一方でここにきて痛感することもあります。それは確固たる統計、エビデンスが可視化されても、それを落とし込み、使うのは人でありヒューマン・タッチが重要であることを。
(一般社団法人日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 リゾートトラスト株式会社人事企画部企画戦略課 東伸)