【シニアマイスター経営の知恵 195】観光リカレント教育の必要性 文教大学国際学部准教授 種村聡子


 近年、リカレント教育やリスキリングという言葉をよく耳にする。リカレント教育とは、「職業人を中心とした社会人に対して、学校教育の修了後、いったん社会に出てから行われる教育であり、職場から離れて行われるフルタイムの再教育だけでなく、職業に就きながら行われるパートタイムの教育も含む」ことである。

 観光業では、常に人材不足が指摘される。この課題に対処するためには、現在の就業者を減らさないことと、他産業から優秀な人材を集めることが必要となる。しかし、厚生労働省が発表した令和4年の賃金構造基本統計調査によると、観光業の代表である宿泊業・飲食サービス業の賃金は最も低かった。また、長時間労働や休日出勤、夜勤等、労働環境が厳しいため、離職者が多く就職希望者が少ないことも指摘される。これでは優秀な人材が他産業へ流出し、観光業で働きたいと思う人材が集まらない。このような状況から脱却するために、既存の観光業就業者と新たに他産業から参入しようとする人材に対して、観光分野のリカレント教育が重要な役割を果たすのではないか。

 観光業は多岐にわたる。対人接客場面が多い一方で、経営や財務管理能力も必要とされる。さらには、自然やその土地にある観光資源を活用しなければならない。地域資源を活用することから地元住民との良好な関係構築も重要である。複合的な能力やスキルが必要とされるが、就業者や参入しようとしている人々、また、受け入れ側の企業も、それらの知識の必要性を十分に認識しているとは限らない。多くの観光産業就業者は現場での実務を通して教育訓練を受けるが、日々の業務に追われている。観光分野のリカレント教育を受けることで、各人が不足している部分を補完することができ、労働環境の改善や業務効率の向上、イノベーションやDXの推進が期待できる。

 現在、観光リカレント教育のカリキュラムと運営方法の標準化に向けての取り組みが進んでいる。今こそ、大学や自治体、観光関連団体が一丸となって持続可能で魅力的な観光リカレント教育に取り組むべきではないだろうか。

 (日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 文教大学国際学部准教授 種村聡子)

 
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