【シニアマイスター経営の知恵 205】友人との旅で得るもの 大妻女子大学人間関係学部教授 八城薫


 成人を過ぎてからの友人関係にはどのような役割があるだろうか? 心理学研究における友人関係に関する研究の多くは青年期までを対象としたものであり、成人や高齢者を対象とした研究は1割にも満たないそうだ。

 友人関係の心理的機能としては、お互いの悩みを聞いたり、相談にのったり、ともに気分転換をしてストレスを解消することで、心理的な安定をもたらす「安定化の機能」、人との付き合い方を学ぶ「社会的スキル学習の機能」、互いに見習い、自分もそうありたいと手本にしたり、人生観や価値観を広げる「モデル機能」に大きくまとめられる。

 友人関係は子どもの発達と適応、社会的自立に重要な役割を果たすものとして、青年期までの友人関係にかかわる諸問題が多く研究されてきた。一方、まだ数は少ないが、成人や高齢者を対象とした研究では、家族以外、つまり友人によるソーシャルサポートの重要性が高まっていることが示唆されており、友人による「安定化の機能」は、成人以降、ますます大切なサポート源として期待されていくようだ。

 私事だが40代を過ぎた頃から俗にいう「女子旅」の機会が増えた。いわゆるアクティブシニア予備軍という位置づけになるのだろうか。とにかくさまざまな旅や未経験のアクティビティに誘われる。

 友人との旅行(「珍道中」と呼んでいる)で痛感するのは、いくつになっても友人関係には先に挙げた三つの機能が健在だということだ。たとえば、同じ部屋に泊まるとそれぞれの生活の知恵が学べて興味深い。ある友人は、ハンカチやタオル代わりにブルーの洗車用タオルを愛用している。確かに吸水性に優れ乾きやすく、コンパクトだ。携行品はじめ旅の知恵は多く持ちあわせている方だと自負していたが、これには笑いとともに驚いた。

 目的地に向かう過程や旅先での人との交流や交渉では、互いの持つ社会的スキルで補い合って旅を楽しいものにしていく。

 旅は、その人となりや生き方も現れやすく、ちょっとした生活の知恵から新しい価値観や人生観まで得られる、刺激的な機会だ。人生100年時代に入り、友人から得るものはまだまだ多そうだ。

 (大妻女子大学人間関係学部教授 八城薫)

 
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