【シニアマイスター経営の知恵 211】満点旅館の秘策 NPO法人シニアマイスターネットワーク会員・日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 帯川修氏


 インバウンドが増えて、ますますウェブの重要性が認識されている。宿泊業では自社やOTAサイトの見せ方が転換率を左右するが集客の基本は商品への信頼度である。そこで今回は評価を上げる秘策を紹介する。[コメモ]と呼ばれ、お客さまの言葉や動作をメモして他の場面でフィードバックする手法である。最近ではメモの代わりにスマホやタブレットも使用されている。

 単純なのでスタッフが飽きてしまいがちだが続けた旅館は確実に評価が上がった。継続するために[毎日必ず一つのコメモを書こう]とルールを作った。お客さまの発言や動作の他に備品のキズや故障などお客さまが目にするものや感じること、何でもよいから1日一つのコメモを書くように義務付けた。

 インセンティブを付けたら結果がめざましくなった。内容の良し悪しよりも続けたことへのインセンティブである。3カ月ごとに評価を発表し年間評価で時給をアップした。

 客室へのご案内の前にレジカードを見て「大阪のお天気はいかがでしたか」、またお風呂から上がったお客さまに「湯加減はいかがでしたか」とオープンクエスチョンを投げかけて言葉を引き出した。「料理がおいしかったよ」と言われたお客さまには帰り際に料理長が献立表にサインをしてお礼を言いながら手渡した。おなかの大きな女性に客室係が「ご出産はいつですか」と聞いて、帰り際にコンシェルジュが近くの神社のお守りを差し上げた。お食事中にくしゃみをしていた子どもの母親にはロビーで支配人が「お風邪は治りましたか」と声をかけて送り出した。

 お客さまの状態を観察することでよく気が付くようになり、さらに評価が上がった。旅館からこれ以上評価が上がったら期待値が高くなって感動が薄れてしまいそうで心配だと言われた。

 労働環境の変化によりチェックインからチェックアウトまで常に同じスタッフで対応するのは難しくなった。そのためお客さまを思いやる仕組み作りが求められている。
 この手法を試みて満点旅館を目指そう。

 (NPO法人シニアマイスターネットワーク会員・日本宿泊産業マネジメント技能協会会員 帯川修)


(観光経済新聞2024年12月16日号掲載コラム)

 
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