【シニアマイスター経営の知恵 214】本物の力で引き付ける観光まちづくり 日本遺産「桑都・八王子」での試みを通して 今野久子


 縁あって2年前から大学が立地する八王子市の観光まちづくりに学生と共に関わる機会に恵まれている。注目しているのは日本遺産である。全国104件の日本遺産のうち東京都内では唯一、八王子市の「霊気満山 高尾山~祈りが紡ぐ桑都物語~」のストーリーが認定され、「桑都・八王子」のまちづくりが推進されている。桑を栽培し養蚕・織物で栄えたまちは各地にあるが、「桑都(そうと)」と呼ばれるのは八王子だけであり、日本遺産の構成文化財にも織物関連の資源が多い。もとより八王子織物の歴史は1100年にさかのぼり、織物業は地域の産業文化の原点である。

 こうしたことから『桑都・織物』を八王子ならではの持続可能な観光まちづくりに生かすことを目的とし、現在の担い手(織物業・その他の事業者等)の意向を尊重し、未来の担い手(市民や来訪者・特に若年層)の愛着と誇りを育てる、の2点を着眼点として体験型観光に取り組んでいる。既存の手織体験には高齢層が多く参加し、商品開発コンペにはデザイン系の学生等が関わっている中で、私たちは「子どもたち」に対象を絞り「夏休み親子体験」を試みた。「伝統工芸士さんに習う手織体験」と「学生による桑都体験」の二本立てである。

 この試みから多くを学んだが、特に改めて実感したのは「本物」の力だ。伝統工芸士さんによる「本格的な手織体験」は、親はもちろん子どもたちの心にも響き「宝物」等と表現された。学生による桑都体験は、1年目は既存の昔スゴロクを利用したが、2年目に開発した「桑都・八王子クイズスゴロク」が好評だった。織物と地域の歴史~現在・今後の展開をたどるストーリーで、写真や資料も多く掲載し、郷土資料館学芸員と日本遺産推進担当者の妥協のないチェックの賜物で、曖昧さや誤解のない「本物」に仕上がった。

 その後、このスゴロクをイベント会場で体験していただく機会があり、市内の織物事業者、小中学生の家族連れ、中高年から90歳の方、そして他市で織物学という冊子を作成しているという方まで、多くの方から、とても面白い、購入したい等の言葉を頂き、うれしい驚きだった。「本物」が心を引き付け、誰が見ても遜色なく、共感される。共感から地域への誇りと愛着が生まれ、住んでよし訪れてよし、につながると期待したい。情報化時代の観光まちづくりにも「本物」との両立を目指したいと思う。

(帝京大学経済学部観光経営学科 今野久子)


(観光経済新聞2025年2月3日号掲載コラム)

 
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