JNTOの9月の推計値によると、一部の国からを除き昨年度の伸びからは5.3%の訪日客減少がみられ、2013年以来の5年8カ月ぶりに前年同月を下回った。特に7月から9月の間の入国外国人減少は観光関係産業にとって大きな影響を与えたと思われる。集中豪雨や台風、地震といった自然の影響がいかに大きなものかを実感した次第である。私共人間の社会と自然との関係をもう一度見直す契機ではないかと思う。
また、特に北海道での地震直後の1週間以上にわたる広域的停電は、私共の社会生活基盤に非常に大きな影響を及ぼすものである。全てを電力に依頼している現代社会の脆弱(ぜいじゃく)性に改めて気付かされ、利用できるエネルギーの多様性について日本の自然の状況をみて再度検討を行う必要があろう。特に宿泊業をはじめ観光産業は人(お客さまと従事者)の流れと物流、エネルギーがなくしてはその営業が成り立たないからである。
日本列島は太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北アメリカプレートの上にあり、1億3千万年前からの地殻移動やマグマが引き起こす火山活動により出来上がっており、逆にそれがわが国の自然的魅力につながっている。日本文化はこのような自然的背景から大きな影響を受け、むしろ、それが明治以来の外国人観光客誘致の基本であったと思う。
さて、ホテル等の宿泊施設は震災等重大災害発生時には被災者収容の拠点の機能を負わなければならないともいわれている。それにはいくつかの条件がそろっていなければその機能は発揮できない。
北海道での発電所給電機能喪失事故は災害大国日本の全国各地で発生する可能性が高い。例えば、ホテルでの自家発電は非常時対応部分のみの容量であり、建物内全ての機能を満たすものではなく、燃料も数日間の容量である。地球温暖化の影響による大型台風や集中豪雨などにより地下室が浸水し、機能不全に至る可能性も高くなっている。また、自然災害などによる交通遮断や物流停止もホテル運営にとって致命的な影響を及ぼし、ホテルの社会的責任にも大きな影響を及ぼすことを私共は再度検討する時期に来ていると思う。
(NPO・シニアマイスターネットワーク副理事長 前帝京大学短期大学教授、満野順一郎)