オリンピックも控え訪日外国人の増加を追い風にホテルも急ピッチで増えている。一方で少子化や若い世代の働く考え方の変化に伴い業界の人材難はますます深刻化している。時代が若者や文化を変えたが国内のホテル旅館は近代的に洗練され、器と人(ハードとソフト)の商品力のギャップは激化している。
商品力を高める人材育成は急務である。スタッフの士気を高め人を集める要素は(1)明確なヴィジョン(2)通気性の良い職場環境(3)充分な賃金、休暇、福利厚生(4)公平な評価・褒賞制度―等が言われて久しいが、それを具現化するのはホテル旅館のトップマネジメントである。
・スタッフは元気か
・仕事を楽しんでいるか
・目標は共有化されているか
これらは企業の制度構築と共にプロパティトップの力量と情熱にかかっている。
平成生まれの「ゆとり世代」に育った若者の仕事へ向けた姿勢や考え方などが問題ではなく、スタッフが楽しんで生き生きと自ら考え自ら動く。そんな元気なホテル旅館が差別化した尖がったコンセプティングやゲストの心に刺さる商品を作り、パフォーマンスを発揮してゲストが再び、そしていつも行きたいと思うホテル旅館を育てる。そういった口コミにより、人が勝手に集まるホテル旅館へと発展していく。
いわばホテルマンとしての洗練性とリーダーシップを兼ね備え、組織文化を造り上げる現場指導者の育成が業界の大きな課題となっている。人は気持ちで動くものであるが根性論ではなく、科学的手法でロジカルに熱意を込めて納得感と効力感を持たせることがポイントである。
それと共に少子化による絶対数不足の人材を確保するキーポイントは優秀な外国人の育成と採用である。近年、対応すべくさまざまな外国人向け検定試験が発足している。日本人以上に日本人らしく古来の文化に強く興味を抱き造脂を深めている外国人も多い中、その点にも視点を置きビジネス接遇力を付ける資格と共に宿泊技能に特化した試験も発足した。私も現在、留学生などの人材育成機関に携わっているが、これらを融合した日本独特な外国人向け業界検定を立ち上げ、現場で生かすことが今後必須である。
そうしたグローバル人材の育成と採用、さらに日本人スタッフとの連動ハーモニーが増え続ける訪日外国人に対応した地域連携の高付加価値な着地型商品を生み、価値の連鎖を起こす、売れるホテル旅館に育つのである。
この先の勝ち残るホテルとなるには現場指導者とグローバル人材の育成に極まると展望する。
(NPO・シニアマイスターネットワーク会員 NPO法人日本ホテルレストラン経営研究所上席教育顧問 丸毛浩一)