青春18きっぷの21年の発売予定が発表されました。新型コロナウイルス感染症拡大で発売を危惧する向きもありましたが、例年どおり春、夏、冬の3回設定され、まずは一安心です。
一方で、青春18きっぷ利用者に愛されてきた快速「ムーンライトながら」は、廃止が発表されました。東京―大垣間を結ぶ、JR最後の座席夜行列車です。新型コロナとは関係なく、車両の老朽化や利用者の減少などが廃止の理由です。そう聞けば仕方ないのですが、廃止を惜しむ声がSNSなどで広まりました。
正直に書くと、筆者は若い頃に、前身の「大垣夜行」には何度か乗りましたが、近年の「ムーンライトながら」にはほとんど乗車したことはありません。知り合いの鉄道ファンに尋ねても「十数年前に乗った」といった、「昔は乗ったことがあるけれど」という返答が多いように感じます。座席夜行列車で一夜を明かすのは疲れますから、年齢を重ねると二の足を踏むのでしょう。社会全体の高齢化を反映して、廃止を惜しむ声の大きさのわりに、利用している人は多くなかったというのが実態のようです。
高齢化といえば、青春18きっぷも影響を受けていそうですが、実はそうでもありません。いまの青春18きっぷには中高年の利用者が多く、近年の販売は堅調です。夜行列車は年齢を重ねるにつれ利用しづらくなりますが、昼間の普通列車なら年齢を問わず気楽に乗れますので、青春18きっぷは何歳になっても使いやすいのです。これが、少子高齢化時代でも青春18きっぷが生き残り続けている理由の一つでしょう。
近年のJRで増えているのが地方の観光列車です。SLあり、グルメ列車あり、リゾート列車ありと多彩。子どもから中高年まで、幅広い鉄道ファンに人気があります。指定席券を買えば青春18きっぷで乗車できる列車も多く、近年は、こうした観光列車を安価に楽しむためのツールとして、青春18きっぷの利用価値が高まっています。
青春18きっぷは、今年で販売開始から39年目を迎えます。夜行列車に乗ることはできなくなりましたが、時代とともに新たな用途が生まれてきているわけです。
もちろん、近場の日帰り旅行にも、長距離乗り継ぎの格安旅行にも使えます。「移動」にも「乗る楽しみ」にも使える柔軟性が、このきっぷの魅力でしょう。末永く販売され続けることを祈りたいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)