【テツ旅、バス旅 22】電化から非電化へ 鎌倉 淳


 磐越西線は福島県の郡山と新潟県の新津を結ぶ路線です。郡山から喜多方までが電化されていますが、このうち、会津若松・喜多方間の電化設備を撤去する方針を、JR東日本が地元に伝えました。

 電化設備とは、架線や変電所など、電車を走らせるための地上設備です。撤去して「非電化」になると、架線から集電する電車は走れなくなります。実際、非電化にともない、電化区間である郡山から喜多方への直通電車がなくなるようで、地元では衝撃をもって受け止められています。

 といっても、今は、技術の進歩で、電気式気動車やハイブリッド車両、蓄電池車両などが開発され、線路に電化設備がなくても、「電車の一種」を走らせられるようになっています。

 電気式気動車とは、ディーゼルエンジンで発電し、モーターで走行する車両です。電気を架線ではなく、搭載する発電機から得て走るので、「電車の一種」といえます。それに蓄電池を組み合わせたのがハイブリッド車両。架線から電気を得るものの、大容量蓄電池を備えることで、架線のない区間も走れるのが蓄電池車両です。

 JRとしては、こうした最新車両を用いて、より効率的な形で列車を走らせる方法を模索しているわけです。電化から非電化になるというと、後ろ向きに捉えられがちですが、代わりに新型車両が投入されれば、先進的な事例となります。

 いずれは、全国の非電化区間で、こうした「電車の一種」が走るようになっていくのは間違いありません。したがって、ローカル線において、「電化」「非電化」を区別する意味は薄れていくでしょう。

 地元の喜多方市としても、後ろ向きに捉えるより「架線を撤去しても『電車』が走る町」とPRしていけば、鉄道に新たな価値を生み出せるかもしれません。

 さらに、今後「電車」の形が全国的に変わっていくのであれば、既存の電化施設のうち、残せる遺構を残しておけば、鉄道遺産として、いずれ価値を持つ日が来る可能性もあります。

 喜多方市には、旧日中線の熱塩駅舎や、磐越西線山都駅油庫、一の戸橋梁などがあり、鉄道遺産が豊富です。それに「電化から非電化」の歴史を刻む遺産が加われば、鉄道名所はさらに充実することでしょう。

 走行していた電車を引退後に引き取って、小さな鉄道記念館を作るくらいの構想を、検討してみてもいいのではないでしょうか。

 (旅行総合研究所タビリス代表) 

 
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