【テツ旅、バス旅 32】自由席の縮小 鎌倉 淳


 新幹線や特急の自由席は、気ままな旅行者にはありがたい存在です。予約なしで乗車でき、空いていれば好きな席に座れますから、文字通り「自由」を満喫できます。

 ところが、最近、自由席が減少傾向にあります。来る3月ダイヤ改正でも、山形新幹線「つばさ」や、紀勢線特急、山陰・福知山線特急が自由席を廃止し、全車指定席となります。房総特急や北陸線特急では自由席を残すものの、指定席を増やします。

 なぜ自由席は減っているのでしょうか。答えはシンプルで、着席保証を望む客が増えているからです。

 筆者の経験でも、指定席が満席のときに自由席に乗ってみると、意外に空いていることが少なくありません。指定席が満席でも自由席に客が流れるとは限らないようで、着席保証を求める客の多さを実感します。

 いまは、高速バスや飛行機など鉄道以外の選択肢がありますから、列車の指定席が取れなければ、他を探すことができます。座れないかもしれない特急自由席に乗る前に、高速バスで空席を探すのは、当たり前の行動かもしれません。

 これをJRの視点で見ると、指定席が少ないことで客を逃してしまうリスクがある、ということになります。

 さらに、在来線特急の自由席では特急券を買わずに乗る人がいるので、車内で検札と出札の手間がかかります。一方の指定席は販売状況と着席状況を照らし合わせれば検札を省略できますし、ネット予約の普及で出札にも人手がかからなくなりつつあります。従って、指定席を増やせば、JRは出札と検札という二つの業務を削減できます。

 要は、自由席の縮小と指定席の拡大は、乗客の嗜好とJRの利益が一致しているのです。ならば、今後も、この流れは止まらないでしょう。

 とはいえ、自由席にはたとえ満席でも「乗ってしまえば移動できる」という、最後の砦(とりで)のような信頼感があります。厳密な定員乗車が求められる高速バスや飛行機にはない、鉄道ならではの強みです。手放すのはもったいないでしょう。

 その点で、JR東日本が「ひたち」や、「あずさ」などで導入している「座席未指定券」という制度はよくできています。全車指定席ながら、空席があれば座っていいという仕組みです。JR他社にも広まって良いのではないでしょうか。

 (旅行総合研究所タビリス代表)

 
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