【テツ旅、バス旅 34】都会のローカルバス 鎌倉 淳


 東京湾岸に新たなバス路線が登場しました。東京駅から東京ビッグサイトを経て東京港フェリーターミナルに至る路線で、JRバス関東の運行です。高速バス車両を使用し、途中停留所は二つだけ。運賃は都バスよりやや高く、全線をICカードで乗ると350円です。1日13往復、おおむね毎時1本が走ります。

 新幹線利用者が、東京駅からビッグサイトに直行するのに便利な路線です。実際、12月下旬にビッグサイトで開かれたコミケの際は、上京した参加者により満席便も出るほどの人気でした。それ以外でも、ビッグサイトのイベント訪問には重宝しそうです。

 ただ、この路線の興味深いところは、ビッグサイトの先、東京港フェリーターミナルまで全便が行くことでしょう。同ターミナルに発着する旅客船は、オーシャン東九フェリーだけで、1日1便の運航のみです。そんな場所に「高速バス」を毎時1本走らせるのですから、太っ腹というほかありません。

 東京駅八重洲南口バスターミナルから乗ってみました。ハイデッカーの高速バス車両とあって、環二通りで運河を渡るときは、素晴らしい眺望です。フェリーターミナルのある有明の埠頭(ふとう)では、港湾エリアの開放感あふれる雰囲気も味わえました。

 平日午前中の便だったからか、東京駅からフェリーターミナルまで、乗客は筆者だけでした。フェリーは朝夜の発着なのでターミナルに旅行者はおらず、閑散としています。窓からは遠くお台場の観覧車が望め、波止場に停泊しているフェリーが旅情を誘います。

 東京駅から30分バスに乗っただけなのに、ずいぶん遠くに来た気がしました。旅行が非日常感を味わうものとするならば、これは立派な小旅行です。

 言うなれば、この路線は「都会のローカルバス」なのでしょう。東京の中心駅から、海に突き出た波止場まで、わずかな乗客を連れていってくれる不思議な路線です。高速バス車両であることが、旅行気分をさらに盛り上げてくれます。

 東京湾岸エリアには、2020年に運行開始した東京BRTもありますし、レインボーブリッジを渡るバスも名物です。

 そこへ東京港への「ローカルバス」が加わって、バス旅をするのに楽しいエリアになりました。東京都内から「身近な旅」に出かける場所として、改めて注目です。

 (旅行総合研究所タビリス代表)

 
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