【テツ旅、バス旅 43】地域間幹線系統 鎌倉 淳


 複数の市町村にまたがって走る広域的なバスを、「地域間幹線系統」といいます。地域の重要な公共交通機関であるため、国交省が赤字の半額を補助しています。

 補助のための要件は、複数市町村をまたがって運行、1日の運行回数が3回以上、1日の輸送量が15~150人などです。

 国の補助を受けている地域間幹線系統は全国に約1500路線もあります。そのため、地方をバスで旅行していると、よくお世話になります。

 筆者が最近乗車した、東海バスの天城峠線もその一つです。伊豆箱根鉄道の修善寺駅から、伊豆急行の河津駅まで41キロを結びます。湯ヶ島温泉や浄蓮の滝、天城峠、河津七滝といった観光地を経由する、伊豆半島の骨格路線というべき存在です。こうした重要幹線ですら補助金を受けなければ維持できないのが、ローカル路線バスの現実です。

 筆者が利用した平日昼間の便では、修善寺駅出発時に8人、河津駅到着時には5人ほどが乗っていました。地方の路線バスとしてはまずまずの数ですが、途中、天城峠を超える山間部では筆者だけでした。

 天城峠線の2021年度の1日当たりの輸送量は16人にとどまり、補助要件の15人をギリギリ上回るレベルです。輸送量は乗車人員の単純な総和ではなく、路線距離に対する1人あたりの乗車距離を反映して計算するので、利用者の少ない区間が長いと数字が小さくなってしまうのです。

 一般論として、利用者の少ない区間を分離すれば、路線の輸送量は形式的に改善します。しかし、利用の少ない部分が市町村境だった場合、その部分を廃止すると、市町村をまたがるという補助金要件から外れてしまいます。

 そもそも、補助金の要件を満たすために路線を改廃するのは本末転倒です。路線ごとに補助金を支給するという仕組みが、地域交通の利便性や効率性を損ねているという指摘もあるほどです。

 国交省は、路線バスに対する補助金制度を変更する検討を行っています。詳細は決まっていませんが、タクシーなども含めエリア全体で地域交通を補助する形が考えられているそうです。

 制度が変われば、対応してバス路線網も変化するでしょう。となると、今後数年で、地方のローカル路線バス網は大きく姿を変えるかもしれません。

 (旅行総合研究所タビリス代表) 

 
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