【テツ旅、バス旅 64】渋24系統 鎌倉 淳


 「渋24系統」は渋谷駅と成城学園前駅とを結ぶバス路線です。世田谷区中央部を横断する基幹的なルートで、東急バスと小田急バスが共同運行しています。

 渋谷駅を出発すると、にぎやかな道玄坂をぐいぐいと登り、玉川通りではクルマの波に揉まれるように進みます。三軒茶屋の喧噪を抜け、マンションが建ち並ぶ世田谷通りに入ると、少し落ち着いた雰囲気に。上町まで東急世田谷線の近くを併走しますが、その先は鉄道空白地帯。小田急線とも東急田園都市線とも離れているため、路線バスが交通機関の主役です。環八を越え、世田谷通りに別れを告げると、成城の高級住宅地。控えめな速度で走り、終点成城学園前駅に到着します。渋谷から約1時間です。

 電車なら20分ほどなので、バスで全線を乗り通す人はあまりいないでしょう。しかし、途中乗降は多く、世田谷区民の「足」としてよく利用されていることがうかがえます。日中は東急と小田急あわせて10分間隔で、いつ乗っても混雑している印象です。

 何の問題もなさそうですが、この路線から小田急バスが7月1日に撤退します。大都会・東京の混雑路線から、経営盤石な大手バス会社が撤退するわけで、ちょっとした驚きをもって受け止められています。

 小田急は、公式に撤退理由を説明していません。コロナ禍を経て、以前より利用者が減っているという事情もあるでしょうが、推測するに、おそらくは運転士不足が最大の理由でしょう。共同運行で任せられる相手がいる路線からは撤退し、浮いた運転士を他路線に回そう、という姿勢に感じられます。実際、玉川・世田谷通りは東急バスの路線が多いこともあり、小田急が撤退しても、東急ならば、ある程度、穴埋めすることはできそうです。

 ただ、その東急も、2021年には「東98」(東京駅前―等々力操車所)で日中の運行区間を縮小するなど、近年は減便傾向がみられます。小田急の穴を完全に埋めるのは難しそうです。

 バス路線の縮小は、少し前まで、主に地方都市での課題とされてきましたが、近年、じわじわと大都市でも顕在化しはじめています。大手バス会社による基幹路線からの撤退は「ついにそこまでの状況になったか」と感じさせる、象徴的な事例にも思えます。

 運転士不足への抜本的な対策は難しそうですが、各社が協力して、効率のいい路線網を維持するよう工夫してほしいところです。

 (旅行総合研究所タビリス代表)

 
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